「香港頑張れ」アムネスティが3つのスローガンを解説

香港頑張れ 社会課題

香港の抗議活動は当初「香港、頑張れ」だった合言葉から「復讐」に変わっていった。スローガンのこの6ヶ月で何があり、今は何に抗議をしているのか。アムネスティ・インターナショナル香港支部の譚萬基(タム・マンケイ)事務局長が12月3日、約200人の参加者へ、スローガンの変化から3つのフェーズで香港のリアルを伝えた。

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「香港、頑張れ」フェーズ1(6月〜9月)

香港の抗議活動は当初、「逃亡犯条例」改正案に対する反対運動として始まった。タムさんは「6月9日に100万人以上が集まったデモは、とても平和的でした」と振り返る。抗議活動に参加する人たちは「平和的」な抵抗と、「力」で対抗する2つのグループがある。メディアでは力で抵抗する方が取り上げられやすい。だが、8月18日にも平和的なデモが行われ、12月8日も平和的なデモが計画されているという。

「平和的なデモをやっていく中で、警官隊の武力による実力行使が始まり、徐々に過剰になっていきました」。

「香港、抵抗」フェーズ2(10月)

スローガンが変わったのは10月。政府はデモ参加者が、マスクなどで顔を覆い隠すことを禁止する覆面禁止令を5日、導入したのだ。議会での審議を経ずに、香港返還後、初めてとなる緊急条例を適用したことも反発を強めた。

「マスク禁止令が出た日にデモ隊の黒いマスクではなく、反対を示すために、普通の白いマスクをした抗議活動も起こりました。この日が分かれ目の日となりました」とタムさん。

この時期から武力介入も頻繁化していったという。平和的なデモで歩いていると1時間後には警察が介入してくる。武力介入してくると、一部のデモ隊が反撃。レンガや水の瓶、火炎瓶で対抗。警察はそれに応じるように、適切なレベルではない武力を行使してくる。放水車や催涙ガスの多用。最初はゴム弾だったが、実弾を発砲するなど、どんどんエスカレートしていく。

「香港、復讐」フェーズ3(11月〜現在)

11月初め。デモの現場で22歳の大学生が亡くなった。「彼の死を境に、スローガンが復讐へと変わりました」。

11月中旬は、香港理工大学などで学生たちがキャンパスを占拠。警官隊は大学の封鎖を決行し、緊迫した事態となった。多くの学生が逮捕され、29日に理工大の封鎖は解除された。

アムネスティ香港は警察の過剰な暴力を批判

アムネスティでは6ヶ月の間に、どのような人権侵害が起きているか、警察の過剰な武力、暴力の調査を行なっている。

「6月22日、集めたビデオを分析して警察の武力行使の実態を明らかにしたレポートを作成し、メディアや国連に提出しました」

過剰な武力の一つに催涙ガスの過剰使用がある。「催涙ガスを使うこと自体は、治安維持に必要であれば認められます。違法ではありません。しかし、過剰に使われていることが問題です」という。

催涙ガスは主に人を解散させるために使用される。だが、香港警察は報復のために使っている。3時間に1000発の催涙弾が使われたこともあり、明らかに過剰だという。

催涙ガスの問題は対象を絞れないこともある。参加者以外の人にも影響を与える。高齢者や子どもが被害にあう自体も起きている。「使えば使うほどエスカレートしています。逆効果です。鎮圧になっていない」

6月から8月にかけて、アムネスは二つ目の報告書作成。警察に逮捕・拘束された30人ほどへ聞き取りを行い、証言をまとめた。

「どんな目にあったかが明らかになってきました。警官が報復のような形で殴る、拷問することがあったこと。逮捕者の中には、医療へのアクセスが拒まれたり、弁護士連絡とらせてもらえなかったりしたこと。警察の暴力は個々の問題ではなく、組織的で構造的な問題だと考え、明らかにしようとさらに、分析を進めています」

独立した調査機関を設置し、状況を分析を

アムネスティでは香港政府に、警察の過度な暴力に対する調査と、平和的な集会の自由、表現の自由を尊重することを求めている。

「警察によって香港の人々の表現の自由、集会の自由が踏みにじられているのです」

香港は「市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)」に基づき、平和的な集会の自由権がある。警官の暴力行為はこれに違反するものである。

タムさんは「香港政府が自ら、国内で適正な調査を行なって対応する。それが、関係を修復することにもつながります。政府が信頼できる政党な権力であると信頼を取り戻すためにも、自ら行うべきです」と見解を述べた。

選挙で平和的に変えることができる

11月24日にあった区議会選挙で、民主派が議席の85%を獲得し圧勝した。過半数をしめていた親中派は、292議席から59議席に減った。

「香港市民は投票で結果を出せることを学びました。2020年には次の選挙(立法会議員選挙)があります。平和的に物事を変えるため行動していくことができます」

選挙を受け、キャリー・ラム行政長官は市民の意見に耳を傾けるとも述べている。このまま、武力で市民を押さえつける対応を続けるのか。別の手段を考えるか。タムさんは「可能性はあります」と信念を伝えた。
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