世界で最も新しい国「南スーダン共和国」がアフリカに誕生したのは、2011年7月9日のこと。日本の約1.7倍ほどの面積で、人口は1500万人ほどの国です。
四半世紀に及ぶ北部との内戦では、200万人以上の死者を出したと言われていますが、アフリカで54番目となる独立国家が生まれたとき、市民たちは歓喜に沸き、希望の未来が見えていた。はずだったのです。
しかし、独立後の歓喜から一転、2013年「大統領警護隊同士が衝突」をきっかけとして各地で衝突が発生。2016年には戦闘が激化。アフリカ最大の難民危機と言われるほどの現状となっています。
NGOも貧困や難民支援、農業、教育など南スーダンへの活動を行っています。各NGOがどのような活動を行っているのか、南スーダンの現状と合わせてまとめています。
南スーダンの現状と歴史
まずは基本情報として、国名について。国名にある「スーダン」は、黒い人の国という意味があります。そして、国旗にある黒は南スーダンの民を表し、白は平和、赤は自由のために流された血、緑は国土、青はナイル川の水、星は団結を意味します。
次に、南スーダンの場所です。
下の地図をご覧ください。南スーダンの位置は赤い丸で囲ったところ。北にスーダンがあり、東にはエチオピア、南にケニア・ウガンダなどが位置しています。現状、これらの国に難民が逃れていっているのです。
南スーダンの歴史、独立後の現状
南スーダンは歴史を振り返ると、1956年にスーダン共和国として英国から独立。北部と南部でイスラム教、キリスト教とに分かれて対立が続き、長く内戦が続いていました。
そして、2011年に南スーダン共和国として遂に独立!
しかし、独立から2年後、原油をめぐる対立からキール大統領が、マーシャル副大統領を解任したことで、再び戦火に包まれます。
独立の前日には、当時の潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が、「南部スーダンには豊富な原油資源があり、耕作可能な広大な土地がある」と述べ、独立後、繁栄していく希望を語っていました。皮肉にも、原油が再び争いを起こす火種となってしまったのです。この内戦によって、数万人が死亡し230万人が避難しました。
日本政府も、2012年1月から国連平和維持活動(PKO)に自衛隊を派遣。当時のニュースでも大きく取り上げられました。
食料不安の現状
ユニセフ(国連児童基金)は、「100万人近い子どもが暴力から逃れるために避難生活を余儀なくされ、 40万人が戦闘のために学校に通えなくなり、 子どもの3分の1以上が栄養不良」と発表しています。石油生産も止まり、生活用品も足りない状態です。
武力衝突を繰り返し、犠牲となる人が増え続け、子どもたちは将来の希望が見えない状況にあります。食料不足も深刻で、ユニセフによれば、南スーダンの人口の約3分の2が、作物が収穫できない時期になると140万人の子どもが栄養不良に陥る可能性があることを示しています。
国連食糧農業機関(FAO)によれば、「現在、54万1,000トンの穀物が不足しており、生産量と自給率を上げるためには、農村部の生活に対する緊急投資が必要」という現状です。
難民の現状
内戦を逃れて、南スーダンから難民となる人も増え続けています。
隣国のウガンダやエチオピア、ケニアなどに逃れており、難民・庇護希望者は「228万6900人以上(2024年時点)」と、「アフリカ最大規模の難民危機」とも言われています。
UNHCRでは、シェルター・水・マット・毛布・食料などの生活物資の緊急救援活動などを行っています。UNHCRの活動へ寄付などの支援をされる方はこちらをご覧ください。
難民支援を行うNGO
難民を助ける会(AAR Japan)は、南スーダンからの難民の避難先となっているケニアやウガンダの難民キャンプ・居住地で活動をしています。難民への支援としては、水・衛生や教育分野での支援活動、青少年育成や保護、学校の建設なども行っています。他にも、ICT技術研修など、将来を見据えた支援もあります。
AARへの支援内容についてはこちらから
また、ジャパンプラットフォームも南スーダン難民緊急支援を実施。
「水・衛生、保健、シェルター、食料・NFI、教育、平和構築・紛争予防、生計創出、プロテクションの分野」での支援が実施されています。
さらに南スーダンの深刻な食糧危機への支援活動も現在行われています。
南スーダンの現地で活動するNGO
日本国際ボランティアセンター(JVC)は、南スーダン現地での活動を実施しているNGOです。日本のNGOでは唯一、現地に入り活動しています。
南スーダンでは、北部ユニティ州のイーダ難民キャンプにて、2012年から難民支援を開始。2016年にはスタッフを送り、避難民への食料・生活用品を支援。現在もスーダン・南スーダン両方での支援活動を継続しています。
JVC駐在員のブログでは、「避難民の生活を支えるとともに、将来を担う子どもたちが学校に復帰できるよう、現地の人々と協力して取り組んでいく」と記しています。
南スーダンの紛争解決に「農業」で取り組むNGO
南スーダンでも繰り返し発生してしまった紛争。
なぜ紛争は繰り返されるのか。紛争が再び起こらないように、世界で紛争の「再発防止」に取り組むのが、Reach Alternatives(REALs:旧、日本紛争予防センター)です。
REALsは現地の人が「被害者・加害者」から「平和の担い手」となることを目指し、各国でさまざまな活動に取り組んでいます。南スーダンでは共同作業を通じた「民族融和」の活動を行います。
農業が紛争予防になる
REALsが開催したセミナーにて、理事長の瀬谷ルミ子さんは「紛争が続いていることで、争いあうことが当たり前になってしまっています。支援物資をめぐって争いになるなど、小さなもめごとでも、爆発してしまうこともあります」と現地の状況を説明。
「南スーダンは部族間の対立が盛んです。だから紛争予防の活動といっても現地の人たちは集まらない。そこで住民みんなが興味を持つ野菜栽培を始めました。野菜という人々をつなげる要素を作った。栽培から加工の仕方も教えました。野菜栽培の活動でお互いに助け合う気持ちが生まれています」
コミュニティリーダーへは紛争解決の研修を行なったり、カウンセラーの育成も行う。「暴力を使わないコミュニケーションが重要。予防のアプローチやリーダーシップを学ぶことで、リーダー同士は関係が良くなってきました」
南スーダン人スタッフのルバイ・ティングワさんは「まずは平和。今度日本に来たときには紛争の話ではなく、南スーダンの美しさを見せたいです」と今後の目標を語りました。
瀬谷さんも「平和って、切実。日本にいる私たちが感じる平和とは意味が違う。現地の人たちが一緒に作業することや、最低限は一緒にいることが大切」と伝え増田。
ユニセフ・南スーダン事務所代表マヒンボ・ムドエさんは「南スーダンの何百万人もの子どもたちは、想像を絶する苦難を強いられ、教育、栄養、保健および人権が妨げられています」といいます。
将来を担う子どもたちの70%以上が、教育を受けていない。3分の1の学校は、武装グループに攻撃された。ユニセフによれば戦闘などによって、2000人以上の子どもたちが死傷したという。
今後も、さらなる世界中からの人道支援が求められている。「人道支援活動従事者には完全かつ安全なアクセス(移動の自由)が必要だ」とマヒンボ・ムドエさんは述べました。