人権問題とは−知っておきたい日本の課題[在住外国人・LGBT・女性・子ども・高齢者]

人権問題とは 社会課題

人権問題とは、「人間らしく、自分らしく、生きる権利」が守られていないことであり、性別、肌の色、年齢、性的指向など、さまざまな社会の偏見・差別によって、自分らしく生きられないことが日本社会でもたくさん起きているのです。

家庭や学校、職場、普段の生活の様々な場面で、自分らしく生きることが難しいと感じてしまう「人権問題」が身近なところでたくさんあります。

人として幸せに生きること、自分らしく生きること。その人がその人らしく生きること。誰もが当たり前に持っているはずの「人の(human)権利(rights)」が尊重されているということです。

身近なところに存在する人権問題には何があるのか、日本国内では女性への偏見や差別など長く課題となっている人権問題もあれば、インターネットの普及により新たな人権問題も生まれています。この記事ではどのような人権問題があるのかをご紹介します。

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人権問題とは

人権とは「誰もが生まれながらにして持っている、人間として幸せに生きていくための権利」。しかし、日本国内でも世界を見渡してみても、人権がおびやかされる様々な人権問題が存在しています。

人権問題は、家庭や学校、職場など、誰しもが日々日常を送っている身近なところで、「生命・身体の安全」に関わることや差別や偏見があるのです。

国連で世界人権宣言が採択されたのは1948年12月10日。現在でも12月10日は世界人権デーとされています。国連や世界の国々、そして日本でも、すべての人に人権を守るために、「人権教育」の推進を行なっています。

皆さんも学校で「人権標語」や「人権ポスター」、「人権作文」などを書いたことはありますか。各地域で人権尊重の理念についての理解が定着する人権教育・啓発に関する施策を積極的に推進人権を考える機会として、子どもの頃から機会を作っています。一人一人の意識が変わることが人権問題の解決につながるのです。

日本の人権問題一覧

それでは、ここからは、具体的に日本国内の人権問題について取り上げます。
以下の人権問題一覧をご覧ください。日本国内だけでも多岐にわたっております。

外国人の人権問題
高齢者の人権問題
LGBTの人権問題
子どもの人権問題
女性の人権問題
障害者の人権問題
同和問題
アイヌの人々の人権問題
HIV感染者等の人権問題
刑を終えて出所した人やその家族の人権問題
犯罪被害者やその家族の人権問題
東日本大震災などの災害に伴う人権問題
インターネット上(SNSなど)の人権問題
企業の職場における人権問題
AIの人権問題
路上生活者の人権問題
難民の人権問題

人権問題は、1997年に「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画では、「女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者等、刑を終えて出所した人等」を重要な人権課題として発表されました。

時代と共に新しい人権問題が現れており、インターネットやAIの人権問題はここ最近注目を集めています。この記事では上記の一覧からインターネットで検索数が多い上位5つのキーワードを紹介します。

外国人の人権問題とは

まずインターネットの検索で最も関心が高かった人権問題が外国人です。
その理由は「在留外国人の増加」です。日本に定住する外国人が増えているということ。普段生活する中で日本で働いている外国人が増えていると感じる人も多いのではないでしょうか。

実際の数字を調べてみると、2012年に約200万人でしたが、2019年には300万人弱まで増えています。

定住外国人数の推移(出入国在留管理庁HPから当サイトにて作成)

それでは、日本に住んでいる外国人にどういった人権問題が起きているのか。例えば以下のような内容があります。

「風習や習慣等の違いが受け入れられないこと」
「就職・職場で不利な扱いを受けること」
「アパート等への入居を拒否されること」
「差別的な言動をされること」
「職場、学校等で嫌がらせやいじめを受けること」

内閣府が行なった世論調査によると、上記の項目について以下の割合となりました。

日本に住む外国人の人権問題

外国人に対しては「ヘイトスピーチ」のことも取り沙汰されますが、日常的にも仕事や学校などあらゆる暮らしの場で差別や偏見を受けることがあります。

高齢者の人権問題

続いて、日本での高齢者の割合の高まりが背景にもあり、関心を高めているのが高齢者の人権問題です。
高齢化社会白書によると人口1億2495万人のうち、65歳以上が3624万人となり、高齢化率は29.0%となります。さらに75歳以上は1936万人です。今後さらにこの割合は増加の一途を辿っていきます。

内閣府の調査で挙げられている高齢者の人権問題には以下があります。

「悪徳商法、特殊詐欺の被害が多いこと」
「病院での看護や養護施設において劣悪な処遇や虐待を受けること」
「経済的に自立が困難なこと」
「働く能力を発揮する機会が少ないこと」
「家庭内での看護や介護において嫌がらせや虐待を受けること」
「高齢者が邪魔者扱いされ、つまはじきにされること」

割合は以下の通りです。

高齢者の人権問題

病院や養護施設、家庭内での虐待をあわせると7割弱にもなり、高齢者への虐待が深刻な問題となっています。
厚生労働省によると、高齢者虐待の件数は、2021年度は養介護施設従事者等によるものが739 件、養護者によるものは1万6426 件となりました。

また、まだ働きたくても働ける機会がなかったり、それによって経済的な自立が難しくなるという問題もこれからの時代、考えなくてはいけない問題となっています。

LGBTの人権問題

LGBTという言葉も社会に浸透し、関心が高まっている一方で、差別や偏見、理解不足といったところはまだまだ課題があります。

それでは、人権問題の項目を見ていきましょう。

「差別的な言動をされること」
「職場、学校等で嫌がらせやいじめを受けること」
「じろじろ見られたり、避けられたりすること」
「就職・職場で不利な扱いを受けること」

割合は以下の通りです。

LGBTの人権問題

欧米と比べて日本国内ではLGBTへの理解が低いため、まだまだ差別的な言動やLGBTであることを理由にいじめなどが起きてしまっている現状です。メディアやNPOなどの情報発信によって理解が広がっているとはいえ、気兼ねなくカミングアウトできる環境があるかというとそうではないのかもしれません。

また、職場で同性パートナーが福利厚生の対象とならないなど不利な扱いを受けることもあります。一方で、大企業では同性パートナーを認める制度を作っていたり、自治体でも東京都が東京都がパートナーシップ宣誓制度を開始するなど、「自分らしく」生きられる環境は広がりつつあります。

いじめなど子どもの人権問題

子どもの人権に関してもさまざまあります。その中でも「いじめ」は昔からあり、子どもたちの安全を脅かす深刻な問題です。以下の動画をまずご覧いただくと出てくるように、今では「SNS」によるいじめが増えてきている現状です。

以下の人権ポスターの記事でも触れていますが、「ネットいじめ」というキーワードもあります。

子どもの人権問題は主に、「いじめ」と「虐待」が挙げられます。そして「いじめや虐待を見てみぬふりをすること」も大変重要な問題です。

先ほど書いた通り、いじめは昔と今では形が変わってきています。学校の中で行われるものではなく、SNSやインターネット上で行われることが多くなっており、周囲の目に見えにくくなっているのです。

文部科学省によると、いじめの認知件数は2019年度「61万2496件」となり、5年連続で過去最高を更新しました。特に小学校、それも低学年の認知件数が増えているのが近年の傾向です。

また、児童虐待も年々増えている現状です。以下、児童虐待相談対応件数の推移のグラフのように2020年、21年と20万件をこえ過去最高となったように増加傾向となっています。

児童相談所での児童虐待相談対応件数の推移(厚生労働省の資料から当サイトにて作成)

女性の人権問題

2023年における日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位となり過去最低となりました。特に、経済部門では121位、政治部門では138位と男性優位の社会が一向に改善されていないことがわかります。

世界の国々と比べて女性の人権問題は課題が多いといえます。
それでは人権問題には具体的にどういったものがあるでしょう。

「職場において差別待遇(女性が管理職になりにくい、マタニティ・ハラスメントなどの妊娠、出産等を理由とする不利益取扱い等)を受けること」
「セクシュアル・ハラスメント(性的嫌がらせ)」
「ドメスティック・バイオレンス(配偶者やパートナーからの暴力) 」
「男女の固定的な役割分担意識(「家事は女性」等)に基づく差別的取扱いを受けること」

女性の人権問題

まず最も割合が高いのが職場における差別待遇です。ジェンダーギャップ指数が低いことが差し示してい流通りです。企業によっても差はありますが、「女性管理職の割合」や「男女間の賃金格差」などが諸外国と比べて明らかに低くなっているのです。

女性というだけでお茶汲みをさせられるといったことを昭和的価値観ということもありますが、今の時代においてもいまだに女性に対する差別と偏見はまだまだ改善されていません。無意識の偏見=アンコンシャスバイアスという言葉も広がっているように、「女性を差別しているとは思っていない」が実際に染み付いた男尊女卑の価値観を持ち続けていることが根源的な課題となっているのです。

セクシャル・ハラスメント(セクハラ)も日本でなかなか解消されない女性の人権問題の一つです。
下のグラフでは、2019年にセクハラ相談は7323件寄せられました。2018年は7639件、2017年は6808件と、改善されていない状況にあります。

都道府県労働局雇用均等室に寄せられた相談件数(2019年)

他にも、「妊娠・出産を理由とする不利益」や「採用や昇進における性差別などの相談」も減少は見られず、根深い問題となっています。

他にも配偶者やパートナーから受ける暴力、ドメスティック・バイオレンス(Domestic Violence)も挙げられます。警察庁の発表によると、2020年に「警察における配偶者からの暴力事案等の相談等件数」は8万2,643件と過去最高となり、年々増加傾向にあるといいます。

内閣府の調査では、配偶者から「身体的暴行」「心理的攻撃」「経済的圧迫」又は「性的強要」のいずれかについて「1度でも受けたことがある」という割合は女性が25.9%、男性18.4%となっています。

そのほかの人権問題についても別途詳しく紹介できたらと思いますが、身近なところに課題がたくさんあり、自分も決して他人事でなければ、当事者となることもあり得るのです。まずは人権問題に関心を持ち、理解を広げていき、差別や偏見をなくしていくことが大切でしょう。