人権ポスターは、小学生や中学生が「人権」について主体的に考えて、理解を深め、行動を変えるきっかけとなるように、全国各地域でコンテストが開催され、募集が行われています。人権ポスターのテーマは広く、ジェンダーについて、障害者や外国ルーツの人への偏見・差別、いじめなど、小学生・中学生の身近にあることから制作することができます。
人権ポスターを作るポイントは「どの人権問題をテーマに選ぶか」、「自分の身近なこととして自分らしいアイデアをどのように作るか」などが大事なところです。テーマが広いため、まずは人権問題のことを知ることが大切なので、ここでは「過去の入選例」をテーマ別に紹介します。自分がどの人権問題をテーマにするのかの参考にしてみてください。
また、友だちや大人と一緒に話してみることで、個性あるアイデアが生まれることにもなるかもしれません。
人権ポスターの目的
人権ポスターを作るためには、まず募集要項に書かれている内容を確認します。目的などを理解することで良いポスターを作ることにもつながります。各地域で書かれていることは少しずつ違いますが、基本的に同じような目的で実施されているでしょう。
いくつか実際の募集要項から抜粋しました。
「だれもが笑顔で暮らせる明るい社会を築く
日常の身近な出来事などを題材
基本的人権の尊重・擁護を訴えるもの。」
「人権が尊重される
明るく住みよい社会を実現する」
「日常の家庭生活、学校生活、グループ活動、地域社会との関わりなどの中で、
人権を尊重することの大切さ」
ポイントは二つあります。
「明るい社会」「日常」の二つです。
人権ポスターを作るときに、「人権」と難しく考えるのではなく、自分の住んでいる地域やコミュニティの中で、誰しもが明るく暮らしていくためにはどうすればいいのか。反対に、日常の中で、明るく笑顔で暮らせない人たちに目を向けてみるということです。
それでは、人権が守られずにつらい思い、生きづらい思いをしている人たちにはどういった人たちがいるでしょうか。
人権問題のテーマ
人権が守られていないことはたくさんあり、日本国内では以下のように「啓発活動強調事項」として取り上げています。
1.女性の人権を守ろう
2.子どもの人権を守ろう
3.高齢者の人権を守ろう
4.障害を理由とする偏見や差別をなくそう
5.部落差別(同和問題)を解消しよう
6.アイヌの人々に対する偏見や差別をなくそう
7.外国人の人権を尊重しよう
8.感染症に関連する偏見や差別をなくそう
9.ハンセン病患者・元患者・その家族に対する偏見や差別をなくそう
10.刑を終えて出所した人に対する偏見や差別をなくそう
11.犯罪被害者とその家族の人権に配慮しよう
12.インターネットによる人権侵害をなくそう
13.北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深めよう
14.ホームレスに対する偏見や差別をなくそう
15.性的指向及び性自認(性同一性)を理由とする偏見や差別をなくそう
16.人身取引をなくそう
17.東日本大震災に起因する偏見や差別をなくそう
この中から、日常、身近にあることはなんでしょうか。
例えば、男女差別。学校で男女で服装が決まっていたり、「男だから」「女だから」と性別で受ける偏見だったり。
子どもの人権でいうと、「いじめ」が多く取り上げられるテーマです。家庭環境の違い、用紙の違い、さまざまな違いによって差別となり、人権が守られないこと。
障害を理由とする偏見や差別も、学校内での子ども同士だけでなく、電車に乗るときだったり、街中で出会ったりする中で感じること。
それでは、ここからは、実際の人権ポスター入選例から人権について考えていきましょう。
人権ポスター入選例
女性の人権、男女差別
まずは以下の作品です。「男らしく、女らしく」なんて必要? という言葉から作者が感じる違和感をストレートに表現しています。「男か女か」と、世の中をたった2つに分けていろいろなことが決められること。こういう作品が評価を得ることも一つですし、学校も少しずつ変わっていっていると思いますが、まだ「男らしく、女らしく」を求められることがあるのでしょう。
日常の疑問をストレートな言葉と人間を2種類に分類するわかりやすいイラストによって表現しています。男、女ではなく一人ひとり違う人間として日々を送ることができれば、だれもが生きやすい明るい社会になるでしょう。
近いテーマで、以下の作品もあります。
「This is ME」というコピーからメッセージ性を感じます。「なぜ女だからスカートをはかないといけないのか」。そんな日々の疑問から生まれたのでしょう。スカートもズボンも選べたり、小学生であればランドセルは「女が赤、男は黒」だったことがどんな色でも選べたりと世の中も変わってきていますが、まだ「女性だから」といった差別、偏見は存在します。
学校だけでなく、大人の世界でも男女差別はあります。むしろ大人のほうが強く残っており、問題となっています。働いている職場の制服がスカートという会社もあるでしょうし、会社の偉い人(役員)は男性が圧倒的に多かったりと「男性と女性で平等に機会が与えられていない」という問題です。
小学校・中学校では、これからもっと変わっていくでしょう。こうした視点で人権ポスターを作ってみるのも時代をとらえていてお勧めです。
また、人権ポスター入選作品としてはあまり多くありませんが、服装であったり、見た目であったり、話し方であったりというのは性的マイノリティの人権にも関係してくるテーマです。「男性の見た目でかわいい服を着てはいけない」などの偏見は根深く存在します。
子どもの人権、いじめ、ネットいじめ
「いじめ」に関する入選例は多いです。それだけ学校では傷ついている人がたくさんいるということであり、重大なテーマです。
上の3作品のうち、1つ目は「いじめ」という言葉は使っていませんが、「気づいて、隠された涙」というメッセージで、学校で辛い状況にあり、明らかな「いじめ」ということではなく笑顔でいるけれど、心では傷ついているというのかなと想像できます。直接的な言葉じゃないからこそ、伝わってくるメッセージがあります。
2つ目は「心は笑っていますか?」という言葉とイラスト。「自分の素直な気持ちが出せないでいる」ということを感じさせる作品です。
いじめなのか、友人関係なのか、先生との関係か、家庭なのか、いろいろなことが想像できるからこそ、多くの人の心に訴えかけるのでしょう。
3つ目は小学生の人権ポスター。「私はイジメをゆるさない」と、ストレートなメッセージ。そして、吹き出しとなっている言葉の数々。「うざい、チビ、バカ、きえろ」。こうした言葉が日常的に使われているのでしょう。心からの言葉が見た人の心に突き刺さります。
この2つの人権ポスターのような視点も大切なメッセージですね。
いじめだったり、学校で何かがあったときに、加害者と被害者、そして傍観者がいます。多くの人がこの立場にいるのではないでしょうか。どうやったらいじめなどを減らせるのか。傍観者が声を上げることが大切だと感じて生まれた作品。
SNSでのやり取りが当たり前になっている社会では「ネットいじめ」もキーワードです。入選作品でもこの作品以外でも見られます。以下の「コロナ差別」のようなポスターもありました。
これらのようにそのときの時代を捉えた視点も人権ポスター作成を考えてみるのも選択肢の一つです。
障害のある人の人権、外国ルーツの人の人権
マイノリティとマジョリティ。少数派と多数派。
多くの場合、マジョリティ、多数派が力を持ち、マイノリティ、少数派が生きづらくなってしまうのが現状です。
障害のある人だったり、外国ルーツの人であったり、見た目が違うこと、文化が違うこと、言葉が違うこと。こうしたことで偏見や差別を受けてしまうことがあります。
「すべての人が明るく生きられる社会」と考えたときに、マイノリティである人たちに対する視点をもつことも重要です。
その他の人権ポスター入選例
ここでご紹介した人権ポスターはほんの一例です。他にもさまざまなテーマや視点で作られている作品がたくさんあります。
人権ポスターを作ることが重要ではなく、この機会に日常にある人権のことを考えて、どうすれば明るい社会になるのか、そんなことを考える機会となることを願ってコンテストは開催されているでしょう。
人権とは・人権標語とは
もっと人権のことを知りたい人は、以下の人権デー・人権週間の記事も合わせてごらんください。
あと、人権ポスターと同様に「人権標語」を作る人はこちらの記事もご覧ください。