赤、青、ピンクと、戦隊コスチュームを身にまとった大学生たちが地域のイベントでボランティアをしている。埼玉県上尾市にある聖学院大学では、「戦隊」の姿でボランティアをするのはお馴染みの光景だ。「戦隊」を陰でサポートする大学のボランティアコーディネーター芦澤弘子さんは、「3年前に人と面と向かって話すのが苦手な学生の活動を一緒に考えている時に思いつきました。シャイな学生が多い聖学院にはあっていたのだと思います。」と経緯を話す。
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ボランティア活動は、他人から認められる経験になる
もともと戦隊メンバーは大学内でボランティアの啓発を目的に活動していた。それが、いつのまにか地域の人にも知られるようになり、イベントなどへお呼びがかかるようになった。
「学生たちのなかには、社会経験もまだまだ少ないため、外の世界へ出ることを躊躇したり、自分に自信をもてずにいる人もいます」。芦澤さんは、学生たちが外の世界へ飛び出し、自分が変わるきっかけをつかめるようにボランティアの場を提供する。ボランティア活動では社会への貢献を通して、人に必要とされたり、ありがとうと言われたりする経験ができる。
「ボランティアコーディネーターの仕事は考えようによっては余計なお世話をすること。一人ひとりじっくり話しを聴いて、悩みや相談に乗ります。自分に自信を持てない学生や人と接することに慣れていない学生もいろいろなことを経験して、たくさん失敗しながら、一つひとつ乗り越えて、地域や未来の担い手になってほしいです」。
戦隊を経験した学生たちは卒業後、地域福祉の現場や、若者の就労支援、社会貢献に取り組む企業など、熱い意志と想いを持って働いているという。
小学生のとき地球の限界に気づいた
ボランティアコーディネーター歴は10年。旅行会社に2年弱務めていたが、環境教育を行うNPOに出会い転機を迎えた。「団体のビジョンの中に、環境や地球の諸問題を解決するには地域の一人ひとりが力をつけ、問題にアプローチする人を増やさなくてはいけないとありました。これが私の本当にやりたいことだって直感で思いました」。そして初めて会った団体の代表に働かせてほしいと直談判をする。
芦澤さんの原点は小学生のときに読んだ「地球の秘密」という同じ小学生の坪田愛華さんが描いた漫画だった。「このままだと地球はもたないと直感的に思いました。そして、経済を支える仕事ではなく、持続可能な社会作りに貢献したいと心に決めました」。
団体の仕事と並行して、地域の市民活動支援センターでボランティアコーディネーターの仕事も始めた。夏休みのボランティアプログラム(夏ボラ)を紹介する経験が、現在の仕事にも活かされている。
「夏ボラに来る人の中には、なにか自分を変えたいとか認められる経験を求めてやってくる方もいました。」。コーディネーターとして、ボランティア情報を一つひとつ丁寧に紹介し、一番合ったものを一緒に選んでいく。「活動する人にとっても、受入れ側にとってもボランティア活動を通して、『ありがとう』と言い合える関係ができることが理想です」。
私の役割は、学生たちの想いを形にする一歩を応援すること
聖学院大学のキャッチコピーは「面倒見の良い大学」。小規模校の特性を生かして、一人ひとりに向き合うことで、入学後見違えるほど成長する学生もいる。その一つのきっかけがボランティア活動だ。
芦澤さんは、ボランティア活動において受入側の団体との連携も重要視している。「団体のことを学生に知ってもらうだけではなく、学生たちの様子を団体に知っていただけるようなコミュニケーションを大切にしています」。
学生は「やりたい・知りたい・伝えたい」などの想いはたくさんあるが、未完成。地域の大人たちが未完成の学生を尊重し、育てる意識で接することで学生は想像以上の力を発揮する。
学生が、外に出ていろいろな社会の問題に気づくことで、それにアプローチをする人も増加する。「私の役割は、学生たちの想いを形にする一歩を応援することです」。