子どもの貧困にボランティアで大学生が貢献するには

子どもの貧困に大学生ボランティアが貢献 ボランティア
キッズドア渡辺由美子理事長が子どもの貧困について説明

「子どもの貧困」問題の解決へ、大学生ボランティアが勉強を教える学習支援事業が全国で広がっている。「ほめられたことがなかった」「初めて誕生日のお祝いしてもらった」経済的に困難な状態にある子どもたちが発する言葉に大学生ボランティアは驚くことも多い。

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子どもの貧困の状況

日本には、約6.3人に1人が貧困状態にあるという(厚生労働省「平成25年 国民基礎調査/貧困率の状況」より)。貧困の子どもは海外だけではなく、日本に目を向けたときにこれだけの数がいる。

世界中で子どもの貧困が問題となり、国連やNGOなど多くの人々が、今の状況をより良くするために尽力しているが、あなたが住む身近な場所にも支援を必要としている人がいるかもしれない。

貧困状態の要因はさまざまだが、教育格差が影響していることが多い。海外でも読み書きができないことで貧困状態に陥る可能性が高いため、国連が識字デーを定めるなど、識字率の向上が解決の道しるべとなっている。

日本では、一人親の家庭の貧困率は51%と世界の国々と比較しても高い。経済的にも苦しい一人親家庭は、長時間労働に出ていて子どもが家で勉強する習慣が作れない、家の手伝いをするため勉強の時間がない、学校の授業についていけない、そして、学力や金銭面でも高校や大学に行くことができなくなる。

いまの日本の社会では、高校や大学を出ていないと就職に不利になってしまう。こうして、子どもの頃に勉強をできないことが、社会に出るときの格差につながってくる。

※貧困率とは、国民一人ひとりの手取り収入を世帯所得から算出したときに、真ん中にあたる人の収入額の半分に満たない人の割合のこと

大学生ボランティアの活躍

この問題をなくすために、NPOなどの団体が子どもたちへ「学習支援」を行う。無料で子どもたちに勉強を教える活動で、多くのボランティアの協力を得て、たくさんの子どもたちに勉強する機会を作る。

NPO法人キッズドアもその一つ。2007年に団体を設立し、学生や社会人のボランティアが、一人親家庭や児童養護施設などで無料学習会を開く。現在では、東北被災地の子どもたちにも学習機会を提供するなど活動の幅を広げている。

「すべての子どもたちが夢や希望を持てる社会」をキッズドアは目指している。

居場所になることが、子どもたちの学習意欲にもつながる

早稲田大学1年のボランティアは、都内のある学習拠点で活動する。中高生なら誰でも参加可能だが、中には、学校や家に居場所がない子や、不登校気味の子など、さまざまな背景を持った子どもたちもいる。

日によってばらつきがあるが平均で20人ほどの子どもたちが来る。勉強は子どもたちが自分のやりたいことを大学生に見てもらう自習スタイルだ。生徒からは「分からないことを、すぐ聞くことができる雰囲気で勉強しやすい。学校の先生に聞くのは気が引けるので助かる」といった声がある。

学習の成果も出ている。通知表に1が多かったが、学習によって1がなくなったという子や、学年順位が100以上あがったという子もいる。

だが、大学生のボランティアは学習面以外の効果も大きいと言う。「この場所が子どもたちの居場所のようにもなっています。勉強ではなく、ちょっと話しにきたという子もいます。居場所になることが子どもたちの学習意欲にもつながります。どのような子どもにとっても、故郷に帰るような気持ちになる場所でありたいです」。

大学生ボランティアが身近なロールモデルになる

日本は教育における私費負担が先進国の中でも非常に多い国だ。お金がないと良い教育が受けられない。だが、良い仕事につくためには、良い教育が必要。一度、レールから落ちてしまうと抜け出すのは難しい。柔軟性のない社会になっている。

学力が低いことにも理由がある。塾に行けないからという単純な問題ではない。家が狭く、勉強机がない家もある。子どもは仕方なく、膝の上で勉強する。受験勉強をしたくても、テレビと同じ部屋で勉強するため集中できない。

親がダブルワークやトリプルワークで必然的にネグレクト状態になる。高校なんて行かなくていいとか、勉強より下の子どもの面倒見てとか。学習支援に来た子どもでお昼代を100円だけ渡される子どももいる。それでは、おにぎり一つ買えない。お腹がすいて午後の勉強に集中できない。教育面以外のところにも課題がある。

キッズドア渡辺由美子理事長は「学習支援で、大学生ボランティアが身近なロールモデルになってくれます。大学生と出会うことで、子どもたちのモチベーションが高まるのです」。厳しい境遇にいる子どもたちだが、大学生と出会うことで視野が広がり、将来の可能性も広がっていく。

学生からの報告会のあとは、今年卒業する大学生の表彰式が行われた。渡辺理事長から卒業生一人ひとりに表彰状が手渡された。大学入学時から4年以上活動を続けてきた学生は「信頼できる仲間と活動できたことを幸せに思っている」と語った。卒業後の進路は、法務省保護局。キッズドアのDNAを受け継いだ若者たちが社会に増えていくことが、子どもの貧困をなくす一歩になっていく。

大学生ボランティアのための「大学の助成金・支援金」

大学生のボランティア活動にかかる経費を支援してくれる大学がある。ボランティアしたくても交通費負担が厳しく、参加できない大学生。明治学院大学や聖学院大学などいくつかの大学は、制度を作り学生を支援する。いかに、一部の大学を紹介。ボランティアをしたい学生は自分の大学にもあるかチェックしてみてください。

明治学院大学ボランティアファンド学生チャレンジ賞

学生の主体的なボランティア活動を支援するための制度。大学ロゴ入りグッズの売り上げの1割を原資としている。応募は学生団体やサークル、個人の応募はできないが、2人以上のチームであれば応募可だ。交通費や書籍代、印刷費など使用用途は広い。

聖学院大学ボランティア・まちづくり活動助成金

聖学院大学では、ボランティアやまちづくりの活動をする学生に対して助成金で応援する制度を作っている。学生団体やゼミなどが公開審査会で発表をして、参加者が寄付をする手法を取る。ドネーションパーティーという手法で、卒業生や地域の人たちが集まり、応援したい団体へ寄付を行う。

青山学院大学ボランティア・プロジェクト・サポート制度

青学では、ボランティア活動をステップアップさせたい学生3名以上のグループに活動費、交通費を助成する制度。

東京大学ボランティア活動支援金

東大は「被災地において救援・復興に関する支援対象活動」をする学生に活動経費を支援する。

明治大学 震災等復興支援ボランティア活動に対する助成金

明大も、震災などの活動への支援だ。学生が災害復興支援活動に関心を持つことや、ボランティアを経験する機会の提供を目的として制度を作っている。活動にかかった旅費・交通費の一部を助成する。

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