温暖化で地球に起こるリスクと対策は?「気温が4度上昇!」

「100〜150年前と比べて世界の平均気温が1度上がった。温暖化対策をしないと今世紀末には4度まで上昇する」国立環境研究所地球環境研究センターの江守正多さんがシンポジウムで気候変動のリスクを説明した。主催は世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)。

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温暖化で地球はこう変わる

COP21では、世界195ヶ国・地域が「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保つとともに、1.5度に抑える努力を追求する」というパリ協定に合意した。史上初めて、温室効果ガス排出削減の取組に、途上国も含む全ての国・地域が参加するという画期的な枠組みだ。

地球は、産業革命以前と比べて、大気中のCO2濃度は年々増加して2倍になり、北極海の海氷面積は100年前の半分。また、氷河や氷床の融解、それに海水の熱膨張により、100年前に比べて20cm弱の海面上昇もみられている。

「温暖化対策をとらないことで、8つのリスクが起こる懸念がある」と江守さんは言う。まず、「海面上昇」が砂浜浸食や高潮を引き起こす。また、「洪水」や「台風」が増加してインフラにダメージを与える。「熱波」による健康被害もある。さらに気温変化で「食料不足」、「水不足」も起こる。気温変化についていけない生物は減少するので、「海の生態系の損失」や「陸の生態系の損失」も深刻な問題だ。

「このままのペースでCO2濃度が上昇していくと、2100年には地球の平均気温が4度も上がってしまう。しかし、今から温暖化対策を行えば、4度の上昇を2度未満に抑えられる可能性がある」と話す。

50年後、100年後も地球で豊かな生活を送るために

このまま温暖化を放っておけば、様々な災害や環境の変化が起こり、地球で暮らすことは少しずつ難しくなっていくだろう。この流れを止めるには、全世界が協力し合ってCO2の排出量を減らすことが課題だ。

2度未満に抑えるために、人類が排出できるCO2の量(CO2累積排出量)は、790GtC(Gigatons of Carbon)と科学的に導きだされている。しかし、すでに2011年までに515GtCが排出されている。差し引くと、残り275GtCしか出せない計算となる。大体1年間で9~10GtCを排出しているので、30年経たずに、限界を迎える。

江守さんは「昔のように電気もガスも使用しないのではなく、豊かな暮らしはそのままに、目標達成をしていく」と言う。そのためには、太陽熱や風力などの再生可能エネルギーの使用など、エネルギーを変えていくこと、それから森林減少をおさえて、植林を進めることも重要だ。また、構造的な変化と共に、効率の良い機器を使うなど日々の省エネと両軸で変化させていく必要がある。

最後に、「難民や紛争も気候変動の影響を受けている」と江守さんは話す。現在、世界中にシリアからの難民が増え続けている。シリアで内戦が始まった一端には、食料不足と干ばつがある。もちろん気候変動だけが要因ではないが、影響は少なからずある。

気候変動は、環境の問題だけではない。豊かな地球で、誰もが安心して生活するために、パリ協定で合意されたことを自分事として、それぞれの国で進めていかなくてはいけない。残された時間はそれほど多くない。

第1回パリ協定締約国会合(CMA1)とは

モロッコのマラケシュで11月7日から18日にかけて、第22回国連気候変動枠組条約(COP22)が開かれている。11月15日の夜には「第1回目のパリ協定締約国会合」が始まる。2015年に世界196ヶ国が温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという目標に同意した歴史的な「パリ協定」に関する初の会議だ。

第1回パリ協定締約国会合では、批准していない国が参加できる方法や、パリ協定を効果的に進めていくためのルール作りなどについて議論する。

世界が気候変動への危機感を感じていることからアメリカや中国、インドなど温室効果ガス排出量の多い国がこぞって批准したことで、パリ協定は11月4日に発効となった。しかし、日本は国内での批准が間に合わず、第1回目のパリ協定締約国会合にはオブザーバーとしての参加となる。

批准の遅れだけではなく、日本は石炭火力発電所を増設など二酸化炭素の26%削減目標を達成する方針が不明瞭だ。