いま、障害者サッカーが熱い。一口に障害者サッカーと言っても、障害によって競技内容はまったく違う。どの競技を観戦するのも面白いが、ボランティアで参加するとさらに深い楽しみができる。
7つの障害者サッカーとは
アンプティサッカー(切断障害)
足や腕に切断障害のある人たちが行う「アンプティサッカー」は7人制。義手・義足は外して、ロフトストランドクラッチという松葉杖で身体を支えながらプレイする。杖で支えながらボレーをするアクロバティックな瞬間もあれば、選手同士の激しい当たりもある。
ブラインドサッカー(視覚障害)
視覚障害の人の「ブラインドサッカー」は5人制。ボールは転がると音が出て、位置が分かるようになっている。この競技も激しい。衝突を避けるため、お互いに「ポイ」と声を出しながらプレイするが、どうしても接触は起こる。ゴールの位置は、「コーラー」の役割をもつ人が声で指示を出し、その声を頼りにシュートを放つ。強烈なシュートが決まれば大歓声だ。
電動車椅子サッカー、CPサッカー、デフサッカー
他にも、自立した歩行ができない重度な障害がある人の「電動車椅子サッカー(パワーチェアーフットボール)」。脳性麻痺の人の「CPサッカー」。聴覚障害者の「デフサッカー」。精神障害者の「ソーシャルフットボール」。指摘障害者の「知的障害者サッカー」。
障害者サッカーは元々リハビリのために始まったものもあるが、徐々に競技性が増していき、どの競技にもスポーツとして観る人を興奮させる要素がある。
障害者サッカーに「ボランティア参加」
障害者サッカーの魅力はもう一つある。チームの一員のような気持ちで身近に関わることができることだ。障がいがある人は、移動や器具の準備など誰かのサポートを必要だ。チームスタッフやボランティアとして関わる人たちが、それを支える。いつしか自分も選手の一員のような気持ちになって関わることができる。
しかし、ボランティアとして参加するときに「障害のある人になにかしてあげたい」のような気持ちは持たない方がいい。上から目線のボランティアになってしまうからだ。
選手もボランティアも一緒になって作り上げていけるのが障害者サッカーに関わる醍醐味。障害者サッカーという知らない世界を知ってみたいとか、観客ではなく身近な立場で関わってみたいとか、単純に楽しそうとか、そういった人はボランティアに参加してみると良い経験ができるはずだ。
昨年4月には7つの障がい者サッカーを統括する、一般社団法人日本障がい者サッカー連盟も設立された。会長は北澤豪。障がい者も健常者も当たり前のように混ざり合う共生社会の実現を目指す。
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障害者と健常者がチームメイト「ユニファイドスポーツ」
障害者サッカーに関心がある人なら知っているかもしれないが、最近広がってきている「ユニファイドポーツ」というジャンルがある。知的障害者と健常者が一緒にプレイするのが「ユニファイドスポーツ」だ。
ユニファイドスポーツとは
ユニファイドスポーツは、障害者を「アスリート」、健常者を「パートナー」と呼び、スポーツを通じて、理解し合うというプログラムだ。
スポーツを一緒にすることで、文化や言葉の異なる人と分かり合えることがある。外国人でも一緒にスポーツをすると言葉を交わさなくても打ち解けられる。子どもたちは、名前を知らなくても公園で同じボールを追いかければ仲良くなっていく。
「見えない隔たり」を解消する
障害者サッカーのように、障害者スポーツと健常者のスポーツははっきりと分けられている。オリンピックも身体障害者はパラリンピックに出る。
しかし、ユニファイドスポーツは一緒にやってしまおうという競技だ。ダイバーシティを考えるときに新たな価値観を提供してくれる。日本では現在、バスケットボールなどでユニファイドスポーツが行われている。
ある知的障害のあるアスリートは、子どもの頃から健常者と一緒にプレイしたことで、その後の就職もうまくいき普通に障害のない人ともコミュニケーションをとっていると言う。
この「普通に」というのが大事なこと。障害のあるなしという見えない隔たりを意識して、相手を理解しようしようと努力してしまうことがある。けれども、本当は人の個性による違いがあっても隔たりなんてないはずだ。
障害の差異によって、ルールは工夫する必要があるだろう。ユニファイドスポーツを小学校や中学校でも導入して、ますます広がり障害のある人もない人も一緒にプレイすることが当たり前になれば、「見えない隔たり」を解消することができるのではないだろうか。