「伝福連携」とは?伝統産業の後継者不足解消と障害者の働く場に

伝福連携とはなにか社会課題

国内の伝統産業は後継者が減り、伝統技術が途絶えてしまうという課題がある。一方、障害者の就労施設では、袋詰めや箱折りなどの簡単な作業が多くやりがいにつながりにくく、工賃も低いという課題がある。

そこで注目されるのが障害者が伝統産業に携わる「伝福連携」だ。伝統産業と福祉の二つの課題を組み合わせることで、双方の課題を解決しながら、Win-Winの関係となることが期待される。

すでに障害者が高齢化の進む農業の担い手となる「農福連携」は全国に広がってきた。障害者の工賃アップにつながる事例も増えている。

京都ではじまった伝福連携

伝福連携は今年の4月から京都市で本格的に始まった。伝統産業の盛んな京都だが、後継者不足が大きな課題となっていた。京都市には74品目の指定伝統産業品がある。

この指定伝統産業で、障害者の雇用や就労支援への業務委託をする団体への補助金を設置した。伝統産業界における後継者確保・技術継承と障害のある方の就労支援・雇用創出を図るための「京都市伝福連携担い手育成支援事業補助金制度だ。

選定されたのは、伝統の京鹿の子絞りを扱う「種田」、京鹿の子絞振興協同組合だ。京鹿の子絞振興協同組合のウェブサイトには以下のように書かれているように、長い歴史のある産業だ。

絞り染めは、日本では千数百年も前から行われており、衣装の紋様表現として用いられてきました。括(くく)りの模様が子鹿の斑点に似ているところから「鹿の子絞り」と言われます。平安初期の歌人、在原業平の読んだ百人一首収載の 「ちはやぶる神代も聞かず竜田川韓紅にみずくくるとは」は 水面に映える真っ赤な紅葉の落葉の美しさを、あの素晴しい絞り染めのようだと詠ったものです。

伝統産業の後継者不足は京都だけの課題ではない。全国で、存続の危機に瀕している産業は多い。伝福連携が課題解決の一つとして、今後、全国に広がっていくだろう。

千葉ではすでに伝福連携が行われている。房州うちわの担い手として、障害を持っていて一般企業で働くことが困難な人を対象に、養成する活動だ。

伝福連携でも重要な「バリア(障害)」を「バリュー」にする視点

「障害というバリアをバリューにデザインする」。
障害者の働き方を考えるとき、鍵となる価値観だ。

障害はこれまで超えるべきものというイメージがあった。だが、当事者や関係者らは、障害というバリアをバリューにする取り組みを始めている。

見えないからこそ見えてくるものがある

NPOが開いたイベントで「バリアをバリューにする」事例を当事者らが語った。

視覚障害者が企業の商品開発のコンサルティングを行っている例がある。見えないからこそ感じられることがあるため、今治のタオルの商品開発を共同で行う。

ダイアログ・イン・ザ・ダーク代表の志村信介さんは「目でデザインすると色の変化を見る。だが、視覚障害者は、手触りを感じて本当に肌に優しいタオルを作れる」という。

「見えないからこそ見えてくるものがある。聞こえないからこそきこえてくることがある」。

ミライロの岸田ひろ実さんは、大病後に車いすの生活となった。車いすの目線は110cm。だが「わたしにしか見えないもの、世界がある」と岸田さんは強調する。「障害を価値に変える。歩けないからこそできるユニバーサルマナーという仕事があった」。

全盲の弁護士として国内で3人目に司法試験に合格した大胡田誠さんは「勉強は目の見える人の何倍も大変だったが、苦労を乗り換えたからこそ相談に来る人を励ますことがある」という。

相談に来る人は、最初は盲目なのかと思う人もいる。だが、親身になって相談を受けていると「私も頑張ってみようと勇気がわいた」といってもらえることがある。

全盲という障害がありながら努力して弁護士となった経験が、相談に乗るときの「バリュー」になっている。

やりがい生きがいを最大限引き出す

もう一つ、障害者が働く環境を考える上で重要なことは、自己肯定感ややりがいをもって働けるかどうかだ。

障害者は日常では健常者から助けられ、ありがとうと言う側になることが多い。仕事を通じてありがとうと言われる側になることは、生きがい・やりがいになる。

六丁目農園という障がい者が働く野菜のビュッフェレストランを運営するアップルファーム代表の渡部哲也さんは「障害者には、簡単でつまらない仕事をさせているところが多い。障害者雇用がうまくいかないのは、表面的な接し方しかしていないからだ。簡単な作業しか任せずに、孤立させてしまう」と話した。

渡部さんは「一人ひとりの可能性を信じきることほしい。差別区別をしない。みんな泣きながら仕事をしている。すると仲間同士で助け合う。そのうちに長所や能力がマッチングできるようになる」と語った。

やりがい、生きがいがあることで、成長実感と存在実感が生まれ継続するのだ。