ピアサポート・ピアサポーターとは?活動や目的、分野ごとの団体を紹介

ピアサポートとは 社会課題

ピアサポートとは障害者やがん患者、アルコール依存など同じような悩みを持つ人たち同士で支えあう活動のことです。
家族や専門の支援者には話しづらいことも、同じ立場の人だからこそ言えることがあり、不安な気持ちを理解し共感してくれるかもしれません。

従来の「支援する・される」の関係ではないピアサポート活動はさまざまな分野に広がっています。最近ではヤングケアラーだったり、兄弟が障害者である「きょうだい児」だったり、なかなか周りには相談がしづらい状況にある子どもに対して、ピアサポートが取り入れられています。

ここではピアサポート・ピアサポーターとはなにか、どのような活動があるのか、分野ごとの団体も紹介します。

筆者である私自身、がん患者の家族という立場でピアサポート活動に参加したこともあります。誰しもが色々な悩みを抱えており、当事者同士で集まり支え合うピアサポートは課題が複雑化する今の時代にとても重要となってきています。

がんサバイバーの経験から音楽を通して人がつながり合う場「カフェフェリシダージ」を提供しているシンガーソングライターのSatokoさんに行ったインタビューもぜひお読みください。

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ピアサポートとはなにか

ピアサポートの意味、始まりと広がり

ピアサポートとは、同じような立場や課題に直面する人がお互いに支え合うことです。英語では「peer support」。peerは「仲間」、supportは「支える」という意味です。

ピアサポートの始まりは諸説あり。
米国で非行防止を目的に始まったということや、精神保健福祉の分野から、また、アルコール依存症の患者が集まって当事者同士で助け合ったということが始まりなどといわれています。いずれも米国での始まりのことですが、ピアサポートという言葉が使われていない時代も、同じ境遇の「仲間」で「支え合う」ということは世界中で行われてきたのでしょう。

現在は障害者や、がん・難病の患者、産前産後に悩む親、アルコールや薬物中毒、そうした人たちの家族などにも広がっています。学生同士で支えあうピアサポート制度を取り入れる大学も多くあります。

日本ピア・サポート学会では「学校でのピア・サポート活動の積極的な取組み」を掲げています。

当事者には周囲の人には言えない悩みというものがあります。支援する・されるという関係では一方的に専門家・支援者が支援するために、本音を出せなかったり自然な人と人との関係性がうまれづらいという課題もありました。ピアサポート活動では「支援する・される」から「支える・支えられる」という関係性をつくることができ、当事者同士で本音を出して体験を語り合う機会になりますだからこそ対等でいられるピアサポートが求められているのです。

ピアサポートは1対1のこともあれば複数で話すこともあります。グループで話をするときは、例えば輪になって座り一人ずつ自分の悩みなどなんでもいいので話していきます。全員が話し手であり聞き手になります。語りを通じて同じ境遇の人の話を聞いたり、自分で言葉にしてみたりすることで、自分の抱えた課題に気づき向き合えるようになっていきます。

ピアサポーターとは。資格がある?

ピアサポーターとは自分も障害や病気の経験があり、その経験を活かして同じ境遇にある仲間をサポートする人のことです。

当事者ならではの経験から相談支援をすることをピアカウンセリングともいいます。ピアサポーターも気を付けることは指導になっていないか、押し付けになっていないか、相手がピア=対等な仲間であることは意識しなくてはいけません。

ピアサポーターには資格はないので誰でもピアサポーターとして活動することができます。米国では、ピアサポートを行うピアサポーターの認定制度が多くの州にあります。資格はありませんが、日本でも自治体やNPOなどが主催するピアサポーターとしての研修制度もあります。

ピアサポーターの研修・養成

きょうと子育てピアサポートセンター
きょうと子育てピアサポートセンター

例えば大阪市では精神障害者の分野でピアサポーター養成講座が実施されています。千葉県でも「精神障害者ピアサポーター」を要請するための「精神障害者ピアサポート専門員養成研修」を実施しています。

他の分野では京都府がん患者団体等連絡協議会がピアサポーター養成講座を実施。京都は子育て分野でも、「ピアサポーター(地域の子育て支援人材)のための養成講座・研修」を行いピアサポートに力を入れてるようです。また、KHJ全国ひきこもり家族会連合会が実施する「ひきこもりピアサポーター研修」などもあります。

大学のピアサポーターは、学内でピアサポーターになりたい学生向けに研修を行っています。例えば東京大学ではピアサポーターに応募した学生に「予備研修の受講(ピアサポート活動に必要な基礎知識の習得)」、「総括講義の受講(重要ポイントの確認とアウトリーチに関する体験学習)」を経て、ピアサポーターとして認定するという流れです。

各分野でピアサポーターの育成が行われているのです。

3つの役割

ピアサポートには3つの役割があります。
ひとつは「情報」。インターネットで一般的な情報をえることはできますが、病気のことや依存症のことなどでは細かい悩み、小さな不安までは解消されません。かといって医療者や専門家に聞くほどでもないということは多々あります。ピアサポートで実際に経験した人だからこそ得られる情報があるでしょう。

次は「仲間」。不安なときにも支え合える仲間がいること、同じ境遇を乗り越えた人がいることで希望を持ち、がんばろうという前向きな力をもらえます。

最後は「地域社会」。例えばアルコール依存症にはまだまだ偏見の目があったりと地域社会で生きていくには課題もたくさんあります。地域社会の理解を得て生きやすい社会をつくることも仲間同士で支え合うというピアサポートの大切な役割です。

ピアサポートを行う団体(分野別)

ここで紹介する団体はピアサポートグループのごく一部です。またピアサポートという言葉を使わずにも同じような活動をしている団体も多くあります。

ピアグループ一覧

・アルコール依存

特定非営利活動法人ASK
公益社団法人 全日本断酒連盟

・ガン

NPO法人キャンサーネットジャパン

・子育て

NPO法人 かたつむり

・ニートひきこもり

NPO法人 ピアサポートネットしぶや

・精神疾患

サポートセンターなかせ ピアサポート連絡会

・LGBT

全国各地にLGBTのピアサポートを行う団体も増えています。大学内でもサークルが立ち上がってきているようです。例えば慶應の「LGBT塾生会」では、セクシュアルマイノリティの学生サークルとして、「ピアサポートや居場所づくり」を目的として活動しています。

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