カフェフェリシダージSatokoさん「音楽に包まれ、心をほぐし、人々とゆったり語り合う癒しの場を創る」

カフェフェリシダージ代表、シンガーソングライターのsatoko NPOインタビュー

カフェフェリシダージ代表、シンガーソングライターのsatoko(古賀聡子)さんの自宅、グランドピアノとギターが2本置かれた小さなライブハウスのような部屋でお話を聞き、実際に弾き語りも聴かせてくれた。大阪人らしい軽妙なトークと明るい太陽のような雰囲気とは少し違う、彼女の歌は大自然の中にひっそりと包まれているような、悲しみと優しさが織り合わされたような歌詞とメロディで心の奥の方に入ってきた。

ギターでの弾き語りをはじめてからは、東京に拠点を置きながらも、多いときは週1のペースで全国のどこかでライブを行っている。とりわけよく行くのは沖縄の離島、宮古島だ。年に4回、一回行くと3週間ほど滞在するということなので、年の4分の1は宮古島にいることになるほどその島に魅了されている。その宮古島がタイトルになる「宮古の風」という曲がある。シンガーソングライターとしてはじめてできた自分の曲だ。

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ずっと音楽をやってきたけど、ぽろっとうみが出たような曲だった。

2005年、友人に連れられて初めて宮古島を訪れた。ちょうどその頃に10年続けたピアノ講師の仕事をやめて、新たにギターの練習も始め、シンガーソングライターとして次の人生を歩み始めようとしていた時期でもあった。

「また来よう、次はここで歌おう!」と、宮古島のリゾートホテルと仕事の契約も決めた。
その矢先だった。白血病と子宮頚がんを告げられた。35歳のときだった。思い描いていた人生を歩めなくなる、仕事の予定も決めたせっかくの宮古島への再訪もできなくなる、なにもかもあきらめなければならない。そんな絶望感、真っ暗な中にいるような感覚の中、おりてきた曲が「宮古の風」だ。

カフェフェリシダージ宮古の風
宮古の風

「ずっと音楽をやってきたけど、ぽろっとうみが出たような曲だった。あっ自分の歌だ、と思った。」シンガーソングライターSatokoといえば宮古の風と今は言われる。宮古の人も好きと言ってくれる。今はそういった声が喜びとなるが、その最中は絶望の中の光でしかなかった。
「あぁ、この一曲で自分の人生を終わらせなければいけないと思ったときに、これが最後の歌なんだと。」自宅の部屋で泣きながら何百回も歌った。
「もしかしたら死んでしまうかもしれない状況の中で、唯一この一曲で自分が生きた証を残せるとしたら美しいかな。」

それから闘病の日々がはじまったが、その間も音楽活動はやめなかった。病気を告知された直後に行った大阪でのライブでは、宮古の風を歌っていると涙が止まらなくなり最後まで歌えなかった。それでもお客さんには気持ちが届いていた。「がんばれ!わたしもがんばるわ。」演奏が終わった後に泣きながら握手を求めてくれる人もいた。
「音楽は人を励ますだけではない。ライブに来てくれた大勢の方々に励まされた。」

数年後、白血病の寛解(病気の症状が一時的に軽くなったり,消えたりした状態)に達し、2011年には休薬状態になるという奇跡的な回復を遂げた。
「この大病を乗り越えられたのは、音楽があったから。自分のこの体験を活かしていけるかなって考えた。自分の曲もある。ガンなどの病気や障がいを持つ方々、周りの方々を支えるようなプロジェクトをはじめたい。」

2013年4月に全国どこへでも出かけていく移動式コンサートカフェ空間「カフェフェリシダージ」を始めた。同じような病気の人に音楽で勇気づける活動だ。自分が音楽によって救われた経験から始めた。
「病気を抱えている方は孤独感に陥りがち。本音で軽やかに話せる話し相手もなく、ひとり悩んでいる人は地方にも大勢いる。話したいけれども、「どう思われるか?」ってことに意識がいく。」

「フェリシダージ」とは、ポルトガル語で「幸せ」という意味

「音楽に包まれ、心をほぐし、人々とゆったり語り合う」というコンセプトのようにカフェフェリダージは、音楽を聞いて終わりでないその場の全てを含めて癒しにつながる空間づくりをしている。名前の由来、「フェリシダージ」とは、ポルトガル語で「幸せ」という意味があり、「カフェ」には茶の湯の精神をこめている。茶の湯の心とは、来てくれた人が「ここで出会う」という奇跡、そしてその一人ひとりの相手をもてなし、心を温め、落ち着かせてあげる、そんな精神だ。

レストラン、カフェ、病院、公共施設、ホール、寺院など、場所を問わずミニライブをする。演奏後はみんなでお茶を飲みながらゆったり語り合う時間だ。自分や周りの人ががんを経験していても、ありのままの自分を素直に語り、分かち合える。お互いに励まし合える、そんな空間を目指した。

ライブが終わると、みんなぽつぽつと語り始める。
「実は・・・」誰かが言葉を発すると、「私もそうだった」とか、「それはこうしたらいいよ」とか、その場に偶然居合わせた人たちがそれぞれ語り始める。病気で頭髪が抜けたためいつも帽子をかぶっている人が「実はわたし・・・」って帽子を取ったり、気持ちが前向きになりもっとおしゃれしようって思えたりと。病気になってふたをしていた心がSatokoさんの音楽と空間によって徐々に開かれていく。

「その人の生きる意欲に火をつけたらあとは自動的に行動する。大本にある生きる源に音楽という形でアクセスしていると思っている。一人ひとりの生きる意欲を開花させることが、一番私が目指していること。」癒しだけではなく、春の芽吹きのように、心が開き、その人の行動までをも変えてしまう。
「音楽ってシンプル。言葉じゃない。聴いて、感じる。人間ってかしこいから頭で色々考えてしまう。音楽は即アクション。気づくということすら越える。好き、ありがとう、だいじょうぶ、がんばろう、それだけ。」

わたしの音楽を聞いて、元気になっていってもらえたらいい。

今では、宮古島や東京を中心に年間10回くらい開いている。
「カフェフェリダージを始めたことで、たくさんの人と出会った。病気の方が多いのでもちろん亡くなっていく方もいる。ひとつひとつ思い出していくと大変。なんでこうなったんだろうって、泣きます。この活動をしている覚悟が試されているなって。それでもそれができる自分が幸せだなとも思う。たくさんの悲しみに出会わせてもらっているなって。」

ホスピスで亡くなる直前の方の前で歌わせてもらうこともある。
「悲しいし涙がでるけど、人の一生のエンディングに立ち会えるってありがたいことだと、それが幸せだと感じる。枕元でありがと〜って言ってくれて、家族の方も喜んでくれたときに、すごく大きな仕事をしているな〜って自分がまた強くなれる。」

カフェフェリシダージは、みんなでお茶を飲みながらゆったり語り合うスタイルのため、少人数での開催になる。そのため、利益を大きく生み出すのは難しい。たくさんの人の協力をえながら一人ひとりを大切にこぢんまりと行っている。

Satokoさんの夢は大きい。地球の裏側にある大好きな国ブラジルでカフェフェリダージをやること、それだけではなく世界中で音楽を奏でたいともいう。世界中には、病気やいろいろな理由で悩む人がいる、日本にも世界にも、カフェフェリシダージのような場を必要としている人がたくさんいるはずだ。

「わたしの音楽を聞いて、元気になっていってもらえたらいい。それだけ。」
最後の曲と思って作った「宮古の風」とともにシンガーソングライターSatokoの音楽は世界中の人を明るく元気にしていく。

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