ICT救助隊|難病ALS患者のコミュニケーション支援

ALSボランティア NPOとは

筋肉がだんだんとやせていき、少しずつ身体が動かなくなっていく難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、2014年に「アイス・バケツ・チャレンジ」で話題となった。ドラマ「僕のいた時間」や、漫画「宇宙兄弟」でもALS患者が登場し、認知は広がっている。

ALSを発症すると、運動機能が失われ、発声ができなくなり、食べ物を飲み込むこともできなくなる。身体は動かないが、意識や五感はそのままあるALS患者にとって、自分の意志を伝えられないというもどかしさがある。NPO法人ICT救助隊は、ICT(情報通信技術)を使ったコミュニケーション支援によって、生きる力を支える活動を行っている。3月12、13日には、横浜で、「難病コミュニケーション支援講座」を開き、作業療法士や患者の家族など約80人が参加した。

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ICTの進歩で、健常者と変わらないコミュニケーションも可能に

ALS患者は特殊な方法を使ってコミュニケーションを取る。ひらがなの50音が書かれた「文字盤」や、口の形で表現する「口文字」など、様々な方法がある。近年は、ICTが発達してきたことで、以前よりも格段にコミュニケーションがとりやすくなってきた。

スイッチ操作を説明するICT救助隊理事長 今井啓二さん
スイッチ操作を説明するICT救助隊理事長 今井啓二さん

指先や頬、眼球など、動かせる部分でスイッチを使い、ipadやiphoneを操作したり、パソコンで文字を入力したりすることも可能だ。スイッチ操作が上手になれば、健常者と同じくらいの速度でチャットもできる。インターネット上で出会った人は、ALS患者だとは気づかないほどだ。

人工呼吸器をつける選択。コミュニケーションが、生きる喜びになる

ALS患者が、生きることを楽しむためには、コミュニケーションをとれるかどうかが重要なキーワードとなる。ALSは約3〜5年経つと、呼吸もできなくなり、人工呼吸器をつけないと死にいたるという難病だ。

当事者でもある日本ALS協会副会長の岡部宏生さんは、「気管切開をして人工呼吸器をつけて生きるか、つけないか。生死の選択を自分でしなければならない。家族の介護疲れや経済負担を考えてあきらめる患者も多い」と話した。ALS患者の約7割が人口呼吸器をつけずに亡くなっていく現実がある。

口文字を使って講演する岡部宏生さん
口文字を使って講演する岡部宏生さん

しかし、ICTを使ったコミュニケーション支援の発達で、生きる喜びが増え、大変な困難を抱えながらも家族と楽しく暮らしている人もたくさんいる。NPOやヘルパーのサポートで、周囲に負担をかけずに一人暮らしをする患者もいる。高額だった人工呼吸器も誰でも手に入りやすい価格になってきた。環境は確実に変わってきている。

相手に合ったコミュニケーション手段を理解し、学ぶことが大切

ALS患者が豊かな人生を送るためには、ALSの理解がさらに広がることが求められている。ICT救助隊事務局長の仁科恵美子さんは、「まずは、ALSに興味をもってほしい。ALS当事者と出会い、文字盤や口文字を使って実際に話してみてほしい」と話す。

東京都立神経病院作業療法士の本間武蔵先生は、「コミュニケーションとは、相手のコミュニケーションの形態をこちらが学び、相互に使える言葉や方法を使ってやりとりすること。人と人とのつながりを作り支えるもの」と定義する。

多様性のある社会を目指すには、外国語や手話を学ぶように、ALS患者とのコミュニケーション手段を理解し、学んでいくことが大切だ。まずは、ALS患者と出会い、話したいと思うことから、誰もが豊かな人生を送ることができる世界に近づいていく。
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