2025年10月に予定される食品の一斉値上げを前に、NPO法人Kids Future Passportが実施した調査で、子育て世帯の9割以上が「栄養に不安を感じている」と回答した。主食である米の価格上昇が家計を直撃し、野菜や主菜の購入を控える家庭も増加。「自分の食事を削って子どもに食べさせる」という声も寄せられ、物価高が子どもの食卓に深刻な影を落としている。
物価高が家庭の食卓を直撃 食費の増加は96.6%

— 10月に3000品目が値上げ予定
帝国データバンクの調査によると、2025年10月には加工食品・冷凍食品・菓子類・飲料など、半年ぶりに約3,000品目が一斉に値上げされる予定だ。日常的に購入する食品価格の上昇は、子育て世帯にとって家計への直接的な打撃となっている。
地域の飲食店をこども食堂化する仕組み「こどもごちめし」を運営するNPO法人Kids Future Passportは、会員1,523名を対象に物価高が家庭の食生活に与える影響を調査。
96.6%の家庭が「食費が増えた」と回答。特に影響が大きい食品として挙げられたのが「米」で、約70%の家庭が値上げを実感している。

米は毎日の食卓に欠かせない主食であり、その価格高騰は家庭全体の食事内容に直結する。米の値上げによって、外食を控えたり、野菜や果物の購入頻度を減らしたりする家庭が増えている実態だ。
9割以上が栄養バランスに不安を抱える現状

食品価格の上昇に伴い、子どもの栄養面への影響も深刻だ。
調査では、92.4%の家庭が「子どもの栄養バランスに不安がある」と回答。野菜・果物の購入頻度が減ったとする家庭は49.9%、主菜の量や質を減らしたとする家庭は36.7%にのぼった。
こうした状況は、特に経済的に脆弱な家庭で顕著だ。将来的な健康格差の拡大にもつながりかねない。
家庭から寄せられた悲痛な声
アンケートの自由記述には、保護者の切実な声が数多く寄せられた。
- 「私は2人の小学生の子どもがいてシングルマザー生活保護世帯です。最低限度の生活、守られているのか──もう分からないほど苦しいです。私の食事を削ってでも子供たちには食べてほしい、ですが与えられる肉魚野菜はかなり減らしている状況です」
- 「全て値上げで毎月ギリギリで困っています。子供の長期休みはとくにお金がかかります」
- 「お米に限らず野菜、乳製品、お菓子など全てが値上がりして家計を圧迫している」
こうした生の声は、統計データでは見えにくい「生活のリアル」を浮き彫りにしている。
要支援世帯では「現金給付」への要望も強まる

調査では、一般世帯・要支援世帯の両方で「食事支援」へのニーズが高い一方、要支援世帯では「現金給付」を求める声が特に多かった。
食費の増加が家計に直撃するなか、今すぐに生活を支える手段として、現金支援の即効性を重視する傾向が強まっている。
NPOによる地域支援の仕組み「こどもごちめし」
Kids Future Passportが運営する「こどもごちめし」は、地域の飲食店を“子ども食堂”として機能させ、困窮する子どもたちに食事を届ける仕組みだ。
デジタルチケットやITを活用し、ボランティア人手不足や資金難といった従来の課題を解決。地域の飲食店・子ども・支援者の三者すべてにメリットのある「三方よしモデル」を構築している。

物価高が家庭に深刻な影響を及ぼす中、こうした地域密着型の取り組みは、子どもたちのセーフティネットとして重要性を増している。
食卓を支える支援の輪を広げるために
今回の調査から、物価高は家庭の家計を圧迫するだけでなく、子どもの栄養や成長にも深刻な影響を及ぼしていることが明らかになった。
特に主食である米や野菜の値上げは家庭の食生活に直結し、栄養バランスの悪化や食事量の減少を引き起こしている。制度的な支援とともに、NPOや地域社会による支援の仕組みが、今後さらに広がっていくことが求められる。
団体概要:NPO法人 Kids Future Passport
NPO法人 Kids Future Passport
所在地:福岡県福岡市博多区千代1-20-31 福岡県千代合同庁舎6階 オフィス4
設立日:2023年6月2日
代表理事:中本真理子
事業内容:地域こども支援事業「こどもごちめし」
Web:https://kids-future-passport.org/


