「BtoB広報は難しそう」と感じている広報担当者は少なくありません。BtoB広報は、ターゲットが限定的で専門性が高く、効果が見えにくいといった特有の難しさがあります。
しかし、広報活動は、BtoB企業が「信頼」を築き、ビジネスを成長させる上で欠かせないものです。
本記事では、BtoB広報とBtoC広報の違いを明確にしながら、BtoB企業が広報を行う目的や具体的な業務内容、そして成果を出すための実践的な戦略を解説します。
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BtoB広報とBtoC広報の違い、BtoB広報の”難しさ”
広報PR担当の中には、「BtoCはやったことあるけど、BtoBの広報は難しくてわからない」という声もよく聞きます。
そこで、ここではBtoB(Business to Business)広報とBtoC(Business to Consumer)広報の違いを整理しました。
比較すると、BtoCの方が届ける対象も広く、メディアも多く、ネタもあり、求められる成果もわかりやすいといった特徴がある一方、BtoBでは、ネタも少なく、専門性が高く理解してもらいづらく、メディアも限られ、成果も複雑といった特徴となっています。
| 項目 | BtoB広報 | BtoC広報 |
| ターゲット | 企業や組織、特定のビジネスパーソン。 | 一般消費者個人。 |
| 購買プロセス | 単価が高く、意思決定に関わるステークホルダーが複数いるため、複雑で長期間にわたる。 | 単価が比較的低く、個人の意思で短期間に決定されることが多い。 |
| 伝える内容 | 機能、ビジネス上の価値、導入効果、信頼性、サポート体制など、専門的で論理的な情報が中心。 | ブランドイメージ、感情、欲望に訴えかけるストーリーや体験談が中心。 |
| メディア | ビジネス系メディア、業界専門メディアなど、専門オウンドメディアなど、狭いターゲットに届けるチャネル。 | 一般向けメディア、雑誌、SNS、YouTubeなど、広くリーチできるチャネル。 |
| 広報の目的 | 認知度向上だけでなく、リード獲得、営業活動への貢献、企業価値向上、採用力強化など、多様な成果が求められる。 | 短期的な売上増や市場でのブーム創出に直結するなど、比較的わかりやすい成果を期待されやすい。 |
| 広報ネタと頻度 | 新しい情報が少なく、発信頻度が限られがち。専門性が高いため、メディアに理解されにくい課題がある。 | 新商品やキャンペーンなど、ニュース素材が豊富で発信頻度も高い。 |
BtoB企業にとって”広報”の目的と重要性
「新製品が頻繁に登場するわけでもない」「一般消費者の目に触れるサービスでもない」BtoB企業では、広報PRが後回しにされがちです。特に中小・ベンチャー企業にとって、直接的な売上に結びつく営業やマーケティング活動が優先されるため、専門の部署がないことも珍しくありません。
マーケティングの目的が「売上」であるのに対し、広報PRの目的は「信頼」の構築です。
BtoBビジネスでは、一般には馴染みが薄く、コンビニに並ぶ身近な商品でもありません。その企業が選んでもらえるかどうかは「信頼できるか」が重視されます。企業がどのような想いを持って事業に携わり、どのように社会に貢献しているかを伝え、信頼性を確立することが最も重要です。
まずは「オウンドメディア」で自社の理念や何者であるかを語り、次に、アーンドメディア:新聞やウェブの記事、SNSでのシェアなどを通じて第三者からの客観的な評価を得ることで、その信頼はさらに強固なものとなります。広告とは異なる、こうした地道な広報活動が、信頼感を高める上で非常に有効です。
BtoB広報の主な業務内容・種類
コーポレート広報
コーポレート広報とサービス広報は、どちらも企業の広報活動ですが、目的や対象、そして発信する情報に違いがあります。そのため、広報PR戦略を立てる際には、それぞれの目的に応じて計画や目標を分けて考えることが重要です。
コーポレート広報の目的は「企業全体のブランディングや企業価値の向上」です。
発信する内容には、企業のミッションやビジョン、SDGs・CSRなど社会的な活動、地域貢献、社員の働き方やダイバーシティの取り組みなどがあります。
コーポレート広報で注意したいのが、「統一されたブランディング」です。
CI:コーポレート・アイデンティティ(Corporate Identity)を整えて、伝えたいイメージとずれないようにしましょう。
サービス広報
サービス広報は、企業が提供する製品やサービスを伝える広報活動です。新製品の発表や、製品の特徴・価値・導入事例を発信し、認知を広げ、最終的に売上向上や新規顧客の獲得につなげる購買促進を目指します。
プレスリリースや展示会の出展などを行い、認知を広げます。
BtoB企業の広報において、メディアに取り上げられたり、SNSで広がったりすることで、営業資料にも実績を入れることができ、お客様の「説得・納得・理解」を促し、信頼してもらうことができます。結果として商談をスムーズに進めることができ受注率を向上させる可能性があります。
社内広報(インナー広報・インターナル広報)
社内広報、インナー広報、インターナル広報など、呼び方はさまざまあります。
社内広報のターゲットは社員。
社内イントラや社内報を活用して、社員に会社のことを知ってもらいます。社員向けに広報活動を行うことで、エンゲージメント(企業への愛着心)を高め、生産性向上や離職率低下に繋がります。
BtoB企業にとって社内広報は実はとても大切です。
身近なところに商品がないため、「自社の製品・サービスに触れたことがない」「自分の会社のことを友人に説明できない」といった状態になってしまいます。会社への愛着が下がり、離職につながりやすくなるのです。
採用広報
採用広報はこれまで人事が担当することがほとんどでした。
しかし、人手不足の時代になって採用に特化した広報の強化が必要になっているのです。
採用広報の目的は、求職者に対して、企業の文化や働く環境の魅力を伝え、理解を深めてもらい、採用活動を支援することです。
コーポレートサイトや、ウェブ記事、SNSなど多様な発信が求職者の企業理解促進に直結し、母集団形成や採用率の向上にも期待されます。
IR(Investor Relations)、危機管理広報
広報担当の役割が広い場合は、IRや危機管理広報まで担当することがあります。
IRは投資家・株主への広報。
自社の経営状況や財務状況、今後の中期計画など、株主や投資家に対して伝えます。
危機管理広報は、トラブル発生時に、企業への悪影響を最小限に抑えるための対応です。平時からのリスクアセスメントと対策計画の準備が重要となります。
効果的なBtoB広報の施策、成功のポイント
BtoB広報を成功させるには、短期的・中期的な広報PR戦略を作理、継続的なアプローチを行うことが不可欠です。
戦略1:ネタの収集・ネタ作り
まず最初に、BtoB広報での難しさの理由にある「ネタの少なさ」を解消することが最重要になります。BtoB企業の広報担当は、結局ここに一番悩んでいます。
メディアに取り上げられない、認知が広がらないなどあったとしても、結局「いいネタ」があるかどうかによってくるのです。
「ネタの収集」と「ネタづくり」
ネタの収集は、まずは社内で各部署とのコミュニケーション。最新の情報や、細かくて面白い取り組みがないか探っていきます。例)現場での小さな業務改善の取り組み、提供サービスのこだわり、など。
ネタづくりは、世の中の時勢、トレンドなどを調べて、自分の会社と繋げながら、切り口を作っていきます。例)SDGs、AIなどのキーワード。
ネタの収集・ネタづくりができるようになると、新しいサービスが出なくても、リリースやレターを作って、社外に発信ができる用になって生き、ネタの枯渇に悩まなくてよくなります。
戦略2:キーメッセージ作り
「第一想起を取りたい」。
こう考えるBtoB企業の人は多いです。
しかし、中小・ベンチャーの場合は同じ業界で大手企業・有名企業がいる場合、ビッグワードで第一想起をとることはなかなか大変です。
そこでキーメッセージが必要になります。
「〇〇社は、〜〜〜の会社です」「〜〜〜の〇〇です」といった会社の枕詞になるキーメッセージを作ることで、このキーメッセージにおいては第一早期を取ることを目指すことができます。
戦略3:広報施策
「オウンドメディア」での情報発信施策
- コーポレートサイト
- SNS
- 社内報、ウェブ社内報
- オウンドメディア
「アーンドメディア」を活用する施策
メディア掲載、インフルエンサー、SNS、コメント、レビューなど第三者による発信など。
- プレスリリース配信
- 報道資料作成、送付
- 記者発表会
- 内覧会
- 試泊会
- セミナー、イベント など
それぞれの施策の具体的な手法やコツについては別の記事で解説します。
戦略4:社内の広報体制の整備
実際に取材を受ける前には、取材対象者を選定しなくてはいけません。社長なのか社員なのか。
取材時の注意事項、企業ブランディングとしての社外発信ルールも定める必要があります。
そのために以下のようなツールを準備したり、社内勉強会の開催も検討します。
- 取材ルール
- 社外コミュニケーションルール
- ソーシャルメディアポリシー
- 危機管理広報マニュアル
- 社内広報勉強会 など
BtoB広報のKPI設定と効果測定
BtoB広報に限らず、広報PRで難しいのがKPIの設定です。
広報の目的は「信頼」の獲得であり、直接的に売上・採用人数などに効果を見込みにくいです。
BtoCであれば、テレビに出たら、その後にすぐに商品がたくさん売れたなど効果を紐付けやすいですが、BtoBにおいては、購入までの検討期間が長くなるので、余計に関連性が見えにくくなってしまいます。
以下は一般的にKPIにすることが多い指標です。
※採用広報に特化した場合、採用関連KPIを設定することがあります。
定量的なKPIの例
- メディア掲載数:社名やサービス名などを含んだ記事の数(重点メディアを絞ることもあり)
- 広告換算額:記事になった媒体で広告を出した時にかかる費用に換算した額(昔ながらの手法で賛否ある指標)
- SNSエンゲージメント: 「いいね」やシェア数、フォロワー数の増加。
- Webサイト閲覧数: 広報施策後の自社サイトへのアクセス数の変化。
- CSアンケート、ESアンケート:顧客や社員アンケートで広報活動の項目を入れる。
定性的なKPIの例
- ブランドイメージの向上
- 採用時のブランドイメージの変化
- 顧客からの評判、信頼の向上
- 社員のエンゲージメントの向上 など
KPIは事業計画と連動し、中長期視点で設定することが重要です。
BtoB広報におけるPR会社の活用
最後に、BtoB広報でPR会社を活用するか迷っている方もいるのではないでしょうか。
PR会社には基本的に広報活動の全てを依頼できます。
ただしそれぞれ得意領域が異なるため、SNS運用をできないところや、採用広報はできないなど、事前に確認が必要です。
BtoB企業がPR会社に依頼するメリットの例を挙げます。
- ネタづくり、切り口づくり:世の中のトレンドやメディア受けすることを日々追っているので、切り口を考える専門家です。ネタ枯渇しやすいBtoB企業でもPR専門家であれば捻り出してくれるでしょう。
- リリース、メディア向け資料作成:BtoBは専門性が高いので、資料が専門的な言葉で難しくなりがちです。そうしたときに、届きやすい見出しや本文を考えてくれます。
- メディア選定:新聞・ウェブなどのメディア選び、SNS選び、インフルエンサー選定など、数多あるメディアから効果的な組み合わせを提案してくれます。
デメリットは、費用がかかることですが、PR専門の社員を置いたり、増やしたりするよりも費用は抑えることができるでしょう。
ただし、そのPR会社の得意領域や、担当する人などは事前に確認しておいた方がいいです。知名度ある企業でも担当者がBtoCしかやったことないということもあるので、注意が必要です。
まとめ
BtoB広報は、単に自社の商品を宣伝するのではなく、社会や業界の課題を解決する存在として企業を位置づけ、信頼性と共感を獲得することが成功の鍵となります。


