悲鳴をあげる樹を治療する「樹のお医者さん」樹木医が守る街の緑

樹木医 NPOとは

樹木医とは、公園や庭園、街路樹などにある樹木の健康を診断し、適切な治療や管理を行う専門家のことです。

樹は声をあげられません。けれど何気ない日々の中で樹を見ても気づかないだけで、実は助けを求めている樹がたくさんあるのです。例えば街路樹や学校にある大きな樹。身近にある樹をよく見てみると、傷があったり、葉が悪くなっていたりと、悲鳴をあげているかもしれません。

そういった樹木を診断して、治療をして、長く生きていけるように保護をすることが樹木のお医者さん、「樹木医」の仕事です。

スポンサーリンク

樹木医の活動

日本には現在、樹木医登録者が2910人(2021年時点)います。しかし、多くの人が樹木医専業ではなく、本業のなかで樹木医の能力を活かしていると言います。公園の管理業務を本業としたり、造園会社に勤務しながら樹木医としての仕事を行っている人もいます。

樹木医の仕事は、あまり一般市民には馴染みがないかもしれません。樹木を治療するという意識があまりないから。しかし、樹木がなくなってしまえば人間が生きていけないのはみんな知っていることでもあります。それに樹木は酸素を出し、二酸化炭素を吸収してくれるだけではなく、「樹を見るとほっとする」というような、まちの景観や癒しとしても人々にはなくてはならない存在でもあります。

樹木の社会問題

日本は世界有数の森林大国と言われていて、日本の国土の3分の2は森林というほど緑にあふれています。森林だけでなく日常生活のなかでも街路樹や学校の樹、神社の御神木など、都会で暮らしていても樹を目にする機会は多いです。

春には桜の樹、秋にはイチョウの樹と、日本の四季を感じさせてくれるのも樹木であり、日々の暮らしに当たり前のようにある存在です。

けれど、そんな樹木も問題を抱えているのです。

公園や街路樹の問題

例えば、東京などの都市圏でも、公園や街路樹にはたくさんの樹木を見ることができます。

しかし、そうした樹木にも問題が指摘されているのです。

近年では経年的な成長や取り巻く植栽環境の変化などの様々な要因により、都市樹木の大径木化や過密化、植栽基盤の劣化、病虫害による生育不良等が生じており、根上りや倒伏による障害に繋がることも少なくない。

国土技術政策総合研究所 研究資料より
https://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn1126pdf/ks1126_09_t.pdf

実際に、さまざまな都市で樹木を伐採する計画が進んでいたりします。

大阪市が2018~24年度に、公園の樹木や街路樹計約1万9000本を伐採する事業を進めている。市は「市民の安心安全に影響する木を撤去している」という

東京新聞 2024年3月10日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/314224

この大阪市に限らず地域のニュースでは、樹木の伐採の報道が流れてきます。
街の人の安全を守るためという一方で、樹木医は問題ないと判断したのに「なぜ切らなければならないか」という声も出ているようです。

安全を守るためなのか、管理コストの問題か。

いずれにせよ一度大きく成長した樹木を切ってしまえば、同じ大きさまで成長させるには長い年月がかかります。

そのためにも樹木医の存在が重要になってくるのでしょう。

樹木医のNPOがある

この樹木を守るためにも、樹を守るための活動をしたり、樹に関心を持つ人を増やしたりというNPOも全国各地にあります。

東京にある、NPO法人東京樹木医プロジェクト、横浜にはNPO法人自然への奉仕者・樹木医協力会、NPOおおさか緑と樹木の診断協会、千葉のNPO法人樹の生命を守る会など。

樹を守る活動に関心がある方は、ぜひ地域のNPO団体をチェックしてみてください。

団体によっては、学校の樹を子どもたちと一緒に診断する環境教育を行ったり、神社の御神木の公開診断イベントなども開催したりと、樹木への関心を広げる活動も行っています。

私たちは知らぬ間に樹木からたくさんの恩恵を受けています。いつも元気をもらっている身近な樹を元気かどうかチェックして、樹と共に支え合っていくという意識を少しでも持つ人が増えることで樹木と人の良い関係が築けていけるのでしょう。

そのほかの環境ボランティアに関心ある方はこちらの記事もご覧ください。