映画「みんなの学校」語録 校長が語るインクルーシブ教育

みんなの学校語録 イベント

特別支援学級はなく、すべての子どもが一緒の教室で、安心して学べる環境を作っている小学校が大阪にある。「みんなの学校」は、少し変わった普通の公立、大空小学校を舞台にしたドキュメンタリー映画だ。4月2日、「みんなの学校」上映会と、木村泰子元校長の講演会が行われた。テーマは「インクルーシブ教育って何だろう?」。開校から9年間、校長を務めた経験で得た学びを話した。

「インクルーシブ教育とは、大空の子どもたちなら『それって空気』って言う。人が人と生きていくことに不可欠なものです」と木村先生は言う。大空小学校では、障がいがある子もない子も一緒の教室で学ぶことは当たり前のことだ。

2015年度、児童数約260人の中に、50人を超える特別支援が必要と言われる子がいた。開校して11年目。全国から評判を聞き、大空小学校を目指す人たちも多い。映画に登場するセイイチロウは、4年生時に、大空小学校に転校してきた。前の学校では2時間過ごすのが限界だったため、長くいられる学校を探して大空にやってきた。お母さんは、「しゃべり方もちょっと違うし、急に発言したり、普通、えって思うようなことも、大空の子たちは、『ああ、そうなんや』って自然と受け入れてくれた」と話す。セイイチロウは、大空に入ってからは休まず毎日学校へ通っている。

スポンサーリンク

みんなの学校語録1「大空では障がいという言葉を使いません」

大空では、学校の努力だけではなく、保護者やボランティア、子どもたち自身も、全員が安心して学べる環境を作ろうという気持ちがある。障がいという言葉は誰一人として使わずに、それぞれの個性を尊重して、できないことがあれば誰かがサポートする。授業中に大きな声を上げても、教室から飛び出しても、大空の子どもたちは自然と受け入れる。

知的障がい、ダウン症、発達障がいなど、障がいについて知ることは大切だが、みんなと違う子どもは障がいのせいとレッテルを貼り、遠ざけてしまう学校もある。「大空ではただの一度も障がいという言葉を使ったことはありません」と木村先生は強調する。

みんなの学校語録2「発達障がいというレッテルが、子どもの未来変えてしまう」

小学校は、保育園と中学校をつなぐ大事な6年間。その最初に発達障がいというレッテルを貼られてしまう子どもがいる。入学時に、みんなと一緒ではなく特別支援学級で学んだ方がいいと仕分けされてしまう。

「医者は、1、2時間で特別支援学級がいいって判定をする。将来、どんな未来が待っているか分からない子どもに。どんな可能性があるかも分からないのに。5、6年しか生きていない子どもの未来なんて親でも分からない。それが子どもの可能性です」。

みんなの学校語録3「全ての子どもに必要な教育とそうでない教育がある」

「テストで100点を取ることが必要な教育でしょうか」木村先生は言う。「点数をあげることが目に見える学力。学校現場では、目に見えない学力が大切です。どれだけ子どもを見ることができるか。30人いたら30通りの教育があるはず。学校は、すべての子どもに必要な教育と、そうでないことを分けなければいけない」。

大空にはマニュアルはない。マニュアルがなければ生徒を見るから。学校現場で発達障がいの子どもが、遠ざけられるのは、学校のニーズに合った教育をするためには、授業が遅れてしまい邪魔となるから。「目の前の子どもをみんなで見て、この子がこの子らしくって教育をしていたら困ることはない」。

みんなの学校語録4「分かったつもりになることだけはしない」

「すぐきれて乱暴になり、自分で考える事もできません」と元いた学校から情報があった子が、大空に転校してくるシーンがあった。このシーンで木村先生は、「学校に通えなくなった子が、転校してきます。自分の目で自分の心で理解してください」と先生たちに向けて言った。

大空小学校では、いつも先生たちで言い合っていることがある。「分かったつもりになることだけはしないように」。5、6年もの間、生きてきた子どもたちは、その子自身にしか分からないことがある。30人いたら30通り。みんな違う。

子どもたちのために頑張っている学校現場はたくさんある。しかし、「すべての子どもたち」のためにとなるとどうだろうか。このイベントを主催したNPO法人アクセプションズは、ダウン症の子どもがいる親が立ち上げた団体だ。ダウン症の子どもも、他の子どもたちと一緒に安心して学べて、障がいを個性として伸ばすことができる社会を作るためには、周りの子どもたち、大人たちが意識を変えていく必要がある。そうすることで、多様性がある、豊かな社会へと変化していくだろう。

■今後の「みんなの学校」上映スケジュール
http://minna-movie.jp/

■NPO法人アクセプションズ
http://acceptions.org/