NPO法人の収入源とは―5つの収益を団体のリアルデータをチェックし解説!

NPO法人の収益源をマトリックスで4つに分類 NPOとは

NPO法人ってもうかるの?
食べていけるの?
ボランティアじゃないの?

「NPOで働いている」と話すと、そんな声を聞くことがあります。(最近は減ってきたかもしれませんが)

では、NPO法人はどうやってお金を得て、事業を行い、スタッフに給料を払っているのか。私も学生時代にNPO法人でボランティアをしているときはあまりわかっていなかったですが、NPO法人に就職してスタッフとして働き始めてから、知らなかったことがたくさんありました。

寄付しても大丈夫?
ボランティアに参加しても大丈夫?
働いてみたいけど大丈夫な団体?

どうやってNPO法人ではお金がまわっているのか、NPO法人の信頼性を判断するためにも、気になるところです。

まず、NPO法人の収入源(収益)は大きく「会費・寄付金・助成金・事業収益・その他」に分けられます。そして、NPO法人が毎年報告しなくてはならない活動計算書では経常利益として、「受取会費・受取寄附金・受取助成金等・事業収益・その他収益」と記載します。

収益全体の中で、寄付金が多いNPO法人もあれば、寄付金はほとんどなくて事業収益や助成金がほとんどというNPOもあるなど、団体の特性によって収益源は様々なんです。

私が所属していたNPOの収入源は、寄付金が多くて、特に個人よりも企業からの寄付金が多いことが特徴的でした。

この記事では、まずは簡単にそれぞれの収益の特徴について解説し、それから実際のNPO法人の収入源の内容、比重をチェックしていきます。

NPO法人の会計情報はすべて公開されているので、だれでも見ることはできますが、あまり収入源の比較をすることはないので、ぜひ記事を読んでみてください。Tableauでビジュアル化しているのでざっくりとビジュアルで掴んでもらえたらと思います。

NPOで働く人の給料に関するリアルな記事はこちらをチェックしてください。

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7つのNPO法人の収入源を比較

まずは、このビジュアルをご覧ください。
福祉系・医療系・環境系・こども系・中間支援・国際交流・国際協力NGOの7つの団体の公開している活動計算書からデータをまとめて、Tableauでビジュアル化しました。ある程度の規模と継続性がある団体として、1000万以上で10年以上活動しているNPO法人から7団体を選んでいます。
※NPO法人の活動計算書は内閣府NPOホームページかそれぞれの団体のウェブサイトで閲覧できます。

2018年から2021年の経常収益のデータを調べています。
2021年の収入源をもとに分析していきますが、「決算年を選択」で変えると違う年のデータも見られます。

NPO法人によって、収益源は全然違う!
ということがイメージでわかっていただると思います。

ちなみに、内閣府NPOホームページで公開しているNPO法人をまとめたデータはまたバランスが偏っていて面白いですね。

内閣府NPOホームページより引用 https://www.npo-homepage.go.jp/kifu/kifu-shirou/npokatsudou-kifu

NPO法人と企業の収益の違い

それでは、改めてNPO法人の収入源についてまとめ。
NPO会計基準を採用しているNPO法人の活動計算書では、以下の5つに大きく分けられます。

受取会費
受取寄附金
受取助成金等
事業収益
その他収益

NPO法人でいう活動計算書は、企業の損益計算書(PL)にあたるものです。

企業とは項目が違いますね。企業は本業で得た収入を売上高と表現しますが、NPOには様々な特性のある収入源で表現しているのです。

なぜNPOでこのような会計基準を作っているかというと・・・NPO法人会計基準協議会のサイトには以下のように書かれています。

NPOの活動を多くの地域の人たちに知ってもらい、より多くの共感と支援を得るために、会計報告を作る統一ルールとして、2010年7月にNPO法人会計基準ができました。

この会計基準に則った会計報告をすることで社会からの信頼性が増します
それにより外部からさまざまな支援(会員やボランティアスタッフ、寄付金・助成金・補助金の獲得など)を調達しやすくなることでしょう。
会計報告とともに、数字で表現できない情報は事業報告書として開示することで積極的な情報公開をなさってください。
みなさんの団体の認知度や信頼性が増すことで必ず支援の輪が広がります。

https://www.npokaikeikijun.jp/about_npocas_top/

財源の特徴を4つに分類すると

日本NPOセンターによると、多様な収入源を持つNPOは、活動していくために、お金をいかに効率よく活用できるか、そのためにどのくらいの資金が必要で限られたリソースの中で調達方法をどうするのかなど、財源の特徴を知ることが重要といいます。

①や②は自前で調達する「内部性の財源」、③や④は外部から調達する「外部性の財源」といえます。また、①と③の財源は支援性の要素が強く自由度の高い資金であり、②と④の財源は対価を伴って行う対価性の資金といえます。これらがバランスよく獲得できれば、財政的には理想的ですが、現実には、NPO側の資金ニーズと資金提供側の仕組みや考え方などが容易に合致せず、結果として、どれかの財源に偏った構造となってしまいがちです。

まずは、内部性の財源を充実し、財政基盤をある程度確立したうえで、さらなる成長を目指して外部性の財源に挑戦するなど、資金調達のあり方を戦略的に考えていくことが大事でしょう。

日本NPOセンターHPより引用 https://www.jnpoc.ne.jp/activity/npo-supporter/to-know/faq/

それではここから一つ一つ見ていきましょう。

NPO法人の収入源:会費

会費とは、NPOの活動を応援したり、協力したりする人が正会員や賛助会員となり、それらの会員から決まった金額を会費として集める資金のことです。会費の種類は様々で、正会員、賛助会員、プロジェクト会員などがあります。会費の金額は、自由に設定できるので、団体によってバラバラです。1000円くらいだったり、1万円を超えるところもあります。会費に関する細かいお話は、また別の記事で解説します。

ここから、先ほどのデータを見てみてください。

一番左の医療系NPOは最も比重が多いのが「受取寄付金」です。反対に一番右の医療・こども系NPOは「受取寄付金」が11%弱で、「受取助成金」が約5割です。

財源の特徴で解説しているように、①にあたる会費は支援性が強くて自由度が高いお金です。
助成金などは一年で終わってしまったり、使用用途の条件もあるため、会費であれば、毎年継続的に収入源として確保でき、かつ、条件がないため、新しい事業を始めるなどの投資として活用することもできます。

上記の7つの団体は歴史も長く、安定して運営しているといます。右の2団体以外は、会費と寄付金で5割を超えていることがわかります。

NPO法人の収入源:寄付金

寄付金とは、NPOの活動をサポートするために無償で提供されるお金などのことです。寄付金以外にも、義援金などと呼ばれることもありますね。また、慣れ親しんだ言葉で「募金」もあり、これも寄付金の一つです。

NPO法人へ直接寄付するというだけではなく、駅前での赤い羽根だったり、ファミリーマートのレジ前においてある寄付の箱だったり、ポイントの寄付だったり、いろいろな形で寄付が行われています。

ファミリーマートの記事を読みたい方はこちらから。

寄付金は認定NPO法人の要件

寄付金がNPO法人にとって重要な理由として、認定NPO法人の要件となっていることがあります。認定NPO法人になると税制上の優遇を受けることができます。

認定NPO法人の寄付金に関する要件は簡単にいうと、
「3000円以上の寄付者が、一年で100人以上いること」
です。

寄付金を100人以上集められる団体は、信頼ができますし、つまり、NPO法人に寄付や、支援や、就職先などで探すときの基準として、認定NPO法人は一つの指標としてわかりやすいですね。

とはいえ、認定NPO法人になっていなくても、素晴らしい団体はたくさんあるので、それだけを基準にはしない方が良いとは思います。

NPO法人の収入源:助成金

助成金とは、行政や民間の財団などが、特定のテーマでの活動を支援するために提供される資金のことです。例えば、ソニー音楽財団の子ども音楽基金だったり、キューピーみらいたまご財団の食の課題解決に向けた助成などバリエーション豊富で探してみるとたくさんあります。

助成金の特徴として、先ほどの図を見ると、3に当たりますね。支援性の要素が強く、外部からの資金です。そして期間が1年間など決まっているところが特徴となります。

そのため、継続的な事業を行う上では不向きです。寄付や会費が少なくて、助成金の割合が高い団体は、単年で大きな事業を行うことができても、安定性は欠けているかもしれません。

NPO法人の収入源:事業収入(自主事業収入・委託事業収入)

事業収入には「自主事業収入」と「受託事業収入」があります。

自主事業収入とは

NPO団体のお金ってどうなっているの?
といった疑問を持つのは、「企業は営利だからお金を稼ぐけど、NPOは非営利だからお金を稼いじゃダメ!」という間違った認識があるから!

NPOも企業のように、モノを売ったり、サービスを提供したりすることで収益を得ることができます。ただ、その利益を社員みんなで分配して豊かな生活を送ろうではなく、活動のための資金として使っていきましょうという目的となります。

つまり、世の中の社会課題に対して活動していくための資金を生み出すために、自主事業として事業収入を増やすことはどんどんやっていった方がいいところ。しかし、人・モノ・金どれも足りないNPOでは、そう簡単なことではなく、なかなか自主事業収入を増やすことができていないという現状もあります。

団体ごとのデータを見ても、事業収益は少ないです。中間支援NPOで4割弱の収益がありますが、これは受託事業収入が多いので、自主事業収入が多いNPO団体は少ないでしょう。

※この点を課題に感じたのか、従来のNPOの収益モデルではなく、社会的起業(ソーシャルベンチャー)として、事業をしっかりと行うNPOが登場したのは、グラミン銀行がノーベル賞を取った2006年ごろ。

以下の記事はNPOが取り組む社会問題にはどのようなことがあるのか参考にお読みください。

受託事業収入とは

受託事業収入は、行政や企業などが事業を直接行うのではなく、他に委託する際に支払う経費のことです。受託事業収入の特徴は、金額が比較的大きいところ。寄付や会費の一口が数千、数万とすれば桁がいくつか変わってくる収入となります。

ただし、注意したいのは、受託事業収入は安定的ではないということ。
金額が大きいため、仮に、事業を委託してその分を担当するスタッフを新たに雇ったとしても、その事業が単年で終わってしまうと、そのスタッフの仕事がなくなってしまうことになります。そうなると雇用を継続するには、新たに仕事を作るために事業を増やさなくてはならず、、事業目的の掛け違いが起こってくる要因となりえます。

おまけ:コロナ禍で変わった収入源、国際交流NPOの場合

新型コロナウイルスによって、多くの企業が苦しい状況にあり「コロナ関連倒産」も増えました。
収入が減ったのは、NPO法人も例外ではありませんでした。特に国際系の団体が大きな影響を受けたのです。国際協力NGOとして事業をしている団体の場合は、現地に行くことができずに活動が行えなくなったことが大きな要因といいます。

具体的に収入面で大きく影響を受けてしまったのは、海外へ行く「スタディツアー」や「海外ボランティア」を収入源としていた団体です。以下のTableauのビジュアルは、ある海外ボランティアを事業の柱としているNPO法人の収入内訳の推移です。

コロナ以前の2018年・2019年は、会費と事業収益が多かったのが、コロナになってからは事業収益がみるみるなくなっていき、代わりに助成金頼みの運営となっていることが見て取れます。収益内訳の順位では、2021年に事業収益が最下位、助成金がトップと入れ替わりました。

おまけ2:Tableauでデータをビジュアル化してみませんか

この記事でご紹介したように、NPO法人の収益データはだれでも見られるように公開されているにもかかわらず、一般の人はほとんど見ることはないでしょう。どこにあるかが分からないというのと、見てもわからないということがあるのではないでしょうか。

しかし、NPO法人として「会員」や「寄付者」など団体に共感し協力してくれる人を増やしていくためには、団体のデータをわかりやすく発信して、いまどういう状況で何を必要としているのか透明性をもって伝えていくことが大切です。

例えば、ご紹介した国際ボランティアのNPO法人であれば、数字でこれだけ困っているんですということもできますが、それだけではなく上記のようなビジュアルを示して、コロナで大きな打撃をうけていると直感的に理解してもらうことができます。

ここで作成したビジュアルは簡単なものではありますが、他にもさまざまなビジュアルを作ることが可能です。以下は収入源の内容ではなく、日本国内の難民認定者に関するビジュアルをTableauで作成したものです。難民認定者がどのような推移をたどっているのか。またどの国の人が認定者として多いのかを視覚的に伝えることができます。

「Tableau」のNPO無料ソフトウェアプログラ厶

tableauにはNPO無料ソフトウェアプログラムがあり、NPOは申請の際の手数料を除いて無料で使用することができるのです。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

また、当社でもTableauのサポートを行っておりますので、導入・活用でお困りでしたらお気軽にお問い合わせください。オンラインでデモを交えてTableauの概要をお伝えすることもできますので、Tableauの導入したいけどサポートが必要という団体はお問い合わせください。