学生と社会を「ボランティア」でつなぐ裏方役、明治大学ボランティアコーディネーター和田更沙さん

2016/07/05 NPO・CSR ライター 辻陽一郎


明治大学和泉ボランティアセンターには、ボランティアに興味がある、相談のある学生が、年間約4000人訪れる。NPOの広がりとともに、「ボランティアに興味のある学生」は年々増加傾向だ。

和泉ボラセンを訪れると、掲示板には、「森で間伐」や「子どもの学習支援」、「途上国で海外ボランティア」など色とりどりの募集チラシが貼られている。部屋へ入ると笑顔で迎えてくれるのは、ボランティアコーディネーターの和田更沙さんだ。

■ボランティアは社会と出会うこと

ボランティアコーディネーターの役割の一つは、学生とボランティア活動をマッチングすること。東日本大震災以降、ボランティア文化も広がってはいるが、どこか敷居の高さを感じる人もいる。「興味はあるけど自分にできるのか?」、「どのボランティアが良いか分からない」。そういった学生の相談に乗る。

和田さんは、一人ひとりの学生とじっくり向き合い、学生の興味を引き出し、数あるボランティア情報からプログラムを一緒に見つけていく。

「ボランティアは社会と出会うことだと思います」と和田さんは言う。「世の中には、子どもの貧困や社会的孤立、過疎化や高齢化など、深刻な社会課題がたくさんあります。そして課題に真摯に取り組む人や、課題に直面する当事者の人たちがいます。ボランティアに参加して、この人たちと出会うと、どこか遠い世界のことだったものが、途端に現実味を帯びてきます」。

ある男子学生は、最初は友だちに誘われたからという理由で、聴覚障がいや視覚障がいがある人も楽しめる「明治大学バリアフリー映画祭」というイベントの企画メンバーに加わった。しかし、実際に視覚障がいの人たちと接する内に、彼らの見え方や感じ方、情報格差にも興味を持ち始めた。モチベーションも高まり、翌年には、イベントのリーダーを務めるまでに意識が変わっていった。

明治大学和泉ボランティアセンターで学生と話す和田さん

明治大学和泉ボランティアセンターで学生と話す和田さん

■ブラジル人の子どもへのボランティア活動で、留学を決意した

和田さんがコーディネーターになったのも大学生のときに経験したブラジル人の子どもへのボランティアがきっかけだ。東京外国語大学ポルトガル語専攻に入学して早々、先輩から「日本にいるブラジル人の子どもと関わる活動を始めたから一緒にやろう」と誘われた。「社会課題」なんて言葉は意識していなかったが、ポルトガル語を使える機会になると思い、気軽に参加した。

定期的に子どもが通う小学校へ行き、休み時間や授業の合間に一緒に遊んだり、分からないところを教えたりした。子どもが喜んでくれることが嬉しかった。

壁にぶつかったのは、子どもの母親と会ったときだ。日本語がまったく話せない母親には、自分の語学力ではなにも伝えられなかった。学校で配られる親向けの手紙を訳して伝えようとしてもできなかった。母親との出会いで、なにもできない自分への悔しさから留学を決心した。それから、1年。ようやく母親とコミュニケーションできるようになった。

活動を続けるうちに、日本が外国人労働者を受け入れていながらサポートが足りないことへの憤りを感じるようになった。

「日本に暮らす外国人住民の抱える苦労を知って、将来への意識も変わっていきました。就活の時期になると、企業で働くのではなく、社会を良くすることに関わる仕事がしたいと思うようになりました」。

■コーディネーターとして視野を広げるため転職

卒業後は、学生時代のボランティア経験を買われ、東京外国語大学多文化コミュニティ教育支援室(現:ボランティア活動スペースVOLAS)で、コーディネーターとして働くことになった。自分が行っていた「多文化共生」のボランティアをする学生のサポートが主な仕事だったので、意識が変わっていく学生を見ることは、やりがいがあった。

大学では、3年働いた。その後、多文化共生以外にも、視野を広げるために、東京ボランティア・市民活動センターへ転職した。

「外国人だけではなく、シニアの人や障がいのある人など、日本人でも暮らしづらさを抱えている人たちがいることを知りました。さまざまな人が暮らしやすい社会とは何か、また、その実現のために何ができるのかを考えるようになっていきました」。

■裏方に徹するのが、ボランティアコーディネーターの役割

もう一度大学で働きたいと思い、2012年から明治大学ボランティアセンターへ就職。以前と比べて、幅広い視点でボランティア活動を紹介できるようになった。しかし、新しいことに挑戦する中で、ボランティアコーディネーターとしての難しさも感じている。

昨年、3回目を迎えた「明治大学バリアフリー映画祭」は、学生が主体で半年以上をかけて作る企画だ。当日は112人が参加して大成功に終わった。

けれども、和田さんは「映画祭自体は成功でも、ボランティアコーディネーターとしては反省が残ります。学生主体なのに、私がいないと回らない状況になってしまったからです。裏方に徹することができなかった」と自戒する。

ボランティアコーディネーターという仕事は、あくまでも調整役であり裏方。どれだけ、学生が直接、社会とつながる経験を提供できるかが重要だ。

日本にも世界にも社会課題は山ほどある。社会に出る直前の時期に、ボランティアを通して、社会と出会い、悩み葛藤することが大切な経験となる。和田さんは、「私たちは背中を押す役割。悩みにはとことん付き合います」こぼれるような笑顔で言った。

明治大学和泉ボランティアセンターウェブサイト

目が見えなくても映画を楽しめる「バリアフリー映画」とは?


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2016/07/05