企業で10年、NGOへ。「本当にやりたい仕事を目指して」—MFCG小野晴香さん

2016/10/06 NPO・CSR ライター 辻陽一郎

@2016MFCG


ミャンマー農村部で支援を行うNGOを日本から支えている。ミャンマーファミリー・クリニックと菜園の会(MFCG:東京・荒川)で働く小野晴香さんは一人黙々と、業務をこなしていた。経理や総務の仕事から支援者対応、広報、ボランティアチームのコーディネートなどなんでもやる。「子どものときはいじめられている子を助けたり、いじめている子をしかったりするタイプでした」。小柄で温和な雰囲気とは違い、強い信念をもって仕事に向かっている。

MFCGは、ミャンマー南西部デルタ地帯で現地住民の健康のために巡回診療や保健衛生指導、家庭菜園作りをおこなうNGOだ。医師でもある代表の名知仁子さんが任意団体を経て2012年に立ち上げた。名知さんは日本とミャンマーを行ったり来たりするため、日本でのオフィスワークは基本的に小野さんが一人で担っている。

■ボランティアの存在がやりがいになる

オフィスにいつも一人でいる小野さんにとってボランティアの存在は大きい。荒川地域に住むボランティアが5人ほど、宛名書きや会員名簿の整理など事務作業の手伝いで毎週オフィスに訪れる。MFCGが運営パートナーと呼ぶ社会人ボランティア(プロボノ)は約17人。イベントや広報などプロジェクトの企画・運営の一員としてMFCGを支える。MFCGの事業の今後を考えるため毎月行う会議でもボランティアの人たちが自分の団体のように熱く意見を語る。

mfcg会議の様子@2016MFCG

mfcg会議の様子@2016MFCG

「支援者やボランティアなど、関わってくれる人たちとの出会いが嬉しい。大切な時間やお金を使って団体を支えてくれています。こんなに気持ちのある人がMFCGだけでもたくさんいるってことは、日本もまだまだ捨てたもんじゃないなと思うようになりました」。

2016年2016年3月MFCG報告会のスタッフ

2016年3月MFCG報告会のスタッフ@2016MFCG

やりがいだけではない。苦労もある。小野さんにとってNGOの仕事は初めてだ。寄付集めなど、以前務めていた企業ではやったことのない業務も多い。しかし、小野さんは「トライ&エラーしながらなんとかやっています。企業のときと違って川上から川下まで全部見られることがおもしろい」とポジティブだ。

■10年企業で働いて、本当にやりたいことに気づいた

小野さんは社会に役立つ仕事がしたいとは思っていたが、国際協力の仕事をしたいと考えてはいなかった。大学卒業後はWebで商品を販売する仕事に携わった。一度転職したが、約10年間企業で働いた。

「仕事は充実していたし商品を販売することでお客さんに喜んでもらえることも嬉しかったです。けれども10年企業で働くうちに、自分が本当にやりたいことは何かということに気づきました。ビジネスを通じてお客さんに夢を与えることで自分の力を発揮したいわけではない。社会の中で弱い立場に置かれている人たちを一緒に支えていきたいと思いました」。

企業を辞めて、関心のあったソーシャルワークの分野を勉強するためカナダに渡った。

■困難な環境にいる先住民族の子どもたちの可能性を信じたい

カナダで人生に大きな影響を与える出会いがあった。先住民族の子どもたちとの出会いだ。先住民族は長い歴史の中で抑圧され、迫害されてきた。現在も残る差別意識にたくさんの先住民族の人々が苦悩している。小野さんは初めてこの事実を知り驚いた。「カナダ人は日本人の私にも偏見なく、優しく関心をもってくれていたので、多様性を尊重するカナダの文化からは信じられないことでした」。

先住民族はカナダの総人口の4%ほど、約140万人いる。「First Nations」、「Metis」、「Inuit」の3つの民族が先住民族として認識されていて、カナダ全域にコミュニティが存在する。

カナダに移り住んだ白人たちが作るカナダ政府は、19世紀から20世紀にかけて先住民のアイデンティティを白人文化に同化させるための教育を強制的に実施した。子どもたちに対して先住民族の言語や文化、伝統的習慣を禁止。逆らうと虐待も行い、多くの子どもたちが命を落とした。

2008年に政府が公式見解でこの施策を謝罪したが、いまだに先住民の人々の痛みは癒えず、ドラッグやアルコールを乱用する人も多い。悲惨な過去といまだに続く差別から自殺率や失業率は高く、子どもたちは将来に夢や希望をもつことが難しい環境にある。

小野さんは深い悲しみを抱く子どもたちを支援する中で、思い悩むこともあった。しかし、日々一緒に時間を過ごすことで気づいたことがあった。「ソーシャルワーカーに限らず支援者として最も大切なのは、当事者の内に秘められた可能性を信じること。出会った子どもたちには自ら変化を起こす力がある。私の役割は、寄り添いながらその力の存在に気づかせることです。」。

先住民族との出会いが、国際協力に関心をもつきっかけとなった。

左が名知さん、右が小野さん

左が名知さん、右が小野さん@2016MFCG

■誰もが生きやすい社会を目指す

MFCGという団体を知ったのは日本に帰国して少し経った頃、偶然人から紹介された。「MFCGは現地住民がもっている可能性に焦点を当てた自立支援を行っていました。保健衛生や菜園の学習機会を通じて個人の可能性を引き出すやり方に強く共感しました」。MFCGは小野さんがカナダで感じたことを実践していた。

カナダで学んだソーシャルワーカーは、目の前の一人と社会全体の環境を変えるために取り組む人々のことだった。ミャンマーで医者として一人ひとりの健康を見ながら、村全体をどうしていくかを考える名知さんの姿は、ソーシャルワークの理念をも実践しているようであった。

「今は、名知さんの行う自立支援を支える仕事にやりがいを感じています。乳がんを経験しながらも45歳で団体を立ち上げ、今も夢を追いかけ続けている名知さんの姿には勇気づけられます。私もこれから色々なことにチャレンジしていきたい。私の根底にあるのは平和を目指すこと。そのために多様性ある差別のない、誰もが生きやすい社会を作ることが目標です」。


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