シリア難民270万人の苦境、単身トルコへ渡り教育支援に挑む日本人女性

2016/05/22 NPO・CSR ライター 辻陽一郎

高田みほさんと、トルコ・ハラン市の子どもたち


シリア紛争は5年目に入り、トルコでは270万人のシリア難民が、行き場を失い苦しい日々を過ごしている。半数は18歳未満の子どもで、約68%は教育を受けていない。未来を生きる子どもたちに希望を残すため、一人の日本人女性が、現地の人と協力して子どもの教育支援に取り組もうとしている。

気づけば、2011年に始まったシリア紛争も5年が経ち、終わりの見えない状況になってきた。いつか帰ることができると避難していたシリア難民は、世界中に広がり約480万人にまで増加した。4月には、ギリシャからトルコへ強制送還も始まった。

トルコに滞在するシリア難民は、正規の仕事に就くことが難しい。NPO団体が、職業訓練を行うこともトルコ政府から禁止されている。シリアとトルコの国境、シャンルウルファ県ハラン市では、安い賃金か無償で働く人も多くいる。この地域は、綿花や小麦畑が広がる農村地。テント暮らしをするシリア人は、土地を借りるかわりに、トルコ人農家にこき使われる選択をとるしかない。

決して裕福ではないトルコ人にとってシリア難民は決して良い存在ではない。自分たちの立場がおびやかされないかと、嫌悪感を抱いている人も多いため、トルコでの生活がストレスフルになっている。家族を養っていくための仕事ができないので、シリア難民の多くは、NGOや国連機関からの支援物資で生活を続けている。

トルコでの生活が成り立たないため、危険でもシリアへ戻る人もいるという。しかし、20~30代前半の若者は、徴兵を恐れて戻りたがらない。小さな子どもにとっても、シリアは爆弾が飛んでいる場所で良いイメージはない。生活が苦しくテント暮らしでも、家族と一緒に自由に走り回れるトルコの方が幸せだという。

■子どもの将来に希望を作るため、「Hopeful Touch」という団体を設立

国境のハラン市の村に滞在するほとんどの子どもたちは、学校に行っていない。トルコ語で行う学校は、言葉の違いについていけない。NGOなどが作る学校は限りがあり、小さな村の子どもたちは距離の遠さから通うことができない。

テント暮らしをするシリア難民の子どもたち

テント暮らしをするシリア難民の子どもたち

高田みほさんは、2010年に大学を卒業しNGOなどで働いていたが、2015年から日本のNGOと、現地パートナー団体が恊働したシリア難民支援事業でハラン市に駐在し、食糧配布・越冬支援のマネージャー・アシスタントとして勤務する。

「駐在している間に、村の子どもたちと出会う機会があった。家庭訪問をしたときに、子どもたちはテントで家族と一日中一緒にいた。子どもたちから、学校に行きたいが行けないという声をたくさん聞いた」と、高田さんは話す。

いつ戻れるか分からないシリア難民の子どもにも教育は必要だと、高田さんは強調する。「長期にわたり不安な生活を送るなかで、学ぶ機会も、発達する権利も奪われてしまった子どもたちに、最低限でも継続的な基礎教育を届け、希望を育てたい」。

トルコのNGOで働くシリア人スタッフ2名と共に、4月、Hopeful Touchという団体を立ち上げた。まずは、村の子どもたち80人にテント教室で、学ぶ機会を作る。「団体名は、希望と支え合うという意味。希望を持ち続けていく」。

今後の課題は、資金集めと、トルコでのNGO登録だ。順調に進めば、長期的にシリア難民の子どもへ教育の機会を作っていくことができる。7月開校を目指して、クラウドファウンディングも始めた。日本人女性がトルコの農村地でNGOを立ち上げた前例はない。簡単な道ではないが、高田さんは、出会った子どもたちのために奔走する。「団体を作るからには、身を捧げる覚悟でやっていく」。

■Hopeful Touchのクラウドファウンディングページ
https://moon-shot.org/projects/hopeful-touch_syria

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2016/05/22