「東北を支援から、東北を学ぶへ」、震災の教訓を未来につなげる——JVC活動報告会

2016/03/30 NPO・CSR ライター 辻陽一郎


3月27日、宮城県気仙沼市、福島県南相馬市で復興支援を行ってきた日本国際ボランティアセンター(JVC)は、都内で「東日本大震災活動報告会」を開いた。JVCは、2011年から活動を始め、避難所から仮設住宅、災害公営住宅へと支援のフェーズも変わっていくなか、地元住民とともに多くの経験を積み重ねてきた。

JVC被災地担当2名とフォトジャーナリストの安田菜津紀さんは、震災後の5年間を振り返り、東北を支えるだけではなく、東北から学ぶことの大切さを伝えた。「震災で亡くなった人の命を未来につないでいくには、できるだけ教訓を持ち帰ること」、と安田さんは語った。

■ 南相馬の5年間「孤独死が出ない被災地でのコミュニティ作り」

南相馬では、住民に必要な情報を提供するための災害FMの運営支援と、孤独死防止のために仮設住宅でのサロン運営を行ってきた。南相馬は、原発から10キロほどの太平洋沿いに位置している。震災前は、人口7万2千人いたが、震災後3月末に1万人にまで激減した場所だ(2016年3月には約5万7000人に回復)。

南相馬はもともと「孤独死」が1人も出ないほどコミュニティのつながりが強い町だったが、若い人の多くが放射能の不安から町を出て行き、コミュニティが分断されてしまった。

JVCがつながっぺ南相馬と共同で運営している仮設住宅サロンの様子。仮設住宅における住民の交流の基盤になっている。

JVCがつながっぺ南相馬と共同で運営している仮設住宅サロンの様子。仮設住宅における住民の交流の基盤になっている。

2000世帯ある仮設住宅に住む人の平均年齢は70歳。見知らぬ人も多い仮設住宅では、高齢の人は閉じこもりがちになり、孤独死の危険が高まっていた。JVCは、孤独死防止のために、心身ともに元気になれるコミュニティ作りに力を注いだ。気軽におしゃべりができたり、民謡を歌ったりできるサロンを、地元のNPOと協力し、2012年に立ち上げ、運営してきた。震災後、JVCの活動地では孤独死は出ていない。

VCが協力して解説された大町東災害公営住宅のサロンの様子。孤独死防止のため、住民自身が運営をしている。

VCが協力して解説された大町東災害公営住宅のサロンの様子。孤独死防止のため、住民自身が運営をしている。

しかし、5年経ち、仮設住宅から公営住宅に移り住むフェーズに入り、新たな課題が生まれている。南相馬事業担当の白川徹さんは、「仮設住宅で築いたコミュニティが復興公営住宅などに移り住むことで再び分断されてしまう。阪神淡路大震災では、仮設住宅から移り住んだ後の方が、孤独死が増加した」と話す。

JVCは現在、住民だけで運営できるサロンを作る取り組みを始めている。今年1月には、公営住宅に住民主体のサロン1号店を開くことができた。住民だけで運営することで、NPOが撤退した後も永続的に続けられるシステム作りが重要だ。

白川さんは、南相馬に寄り添ってきて、「孤独死が出ない被災地でのコミュニティから学ぶことは多い。これからは東北を支援するというだけでなく、学ぼうという考え方が大事」と話す。

■ 気仙沼の5年間「高台移転の教訓を未来に活かす」

気仙沼市の中でも被害の大きかった鹿折(ししおり)地区でも、2011年から復興支援活動を行ってきた。災害危険区域に指定された土地には戻れないため、住民は高台移転(防災集団移転促進事業)を目指す。JVCは、高台移転を希望する住民に対して、相談やアドバイザー派遣の支援を行う。

 共同建設方式で竣工した住宅。防災集団移転アドバイザーとともに記念写真。


共同建設方式で竣工した住宅。防災集団移転アドバイザーとともに記念写真。

約40ヶ所で進められている高台移転は、2017年度でほぼ100%完成する。しかし、住宅再建の経済的負担の大きさや、移転先の地権者との交渉など住民の負担が大きいことで、高台移転を断念する人も多い。気仙沼事業現地代表の岩田健一郎さんは、「また一人また一人と住民が出て行ってしまった」とコミュニティが壊れていく姿を語った。

また、岩田さんは、高台移転の教訓を未来に活かすことの重要性を語った。「高台移転は、費用対効果がどうだったか、あり方として正しかったのか。将来どこかで災害があったときに、活かさなければならない。そのために、我々は検証していくことが重要だ。被災地以外の人たちは、復興がどういう風に行われているかをチェックする視点でみてほしい」。

この5年間、「被災地を忘れない」を合い言葉に、日本中の人々が自分たちに何ができるのかを考え、支援してきた。しかし、時が経ち、被災地とそれ以外の場所で心の分断が起きる今、支えるだけでなく、「被災地から学ぶ」という視点を加えることが大切となる。サロンや高台移転など、コミュニティに関わる経験は災害時だけでなく日々の暮らしにも役立つことがある。


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2016/03/30