「子どもの貧困」、正論よりも子どもたちの声を聞いて

2017/12/11 NPO・CSR ライター 辻陽一郎

あすのば全国集会

あすのば全国集会

子どもの貧困という言葉を聞く機会は増え、子どもたちへの支援も広がってきた。だが、本当に子どもたちの生きづらさは和らいだのか、状況は改善されているか。

子どもの貧困対策推進法が2013年に成立してから来年で5年が経つ。今こそ、さまざまな大人たちが語る正論だけではなく、子どもたち・若者たちの声に耳を傾けたい。

子どもの貧困対策に取り組む公益財団法人「あすのば」は3日、都内で3回目となる全国集会を開いた。あすのばに関わる大学生、高校生、社会人はそれぞれの体験や思いを約180人の参加者に向けて語った。

■貧困家庭かはグレーゾーン

登壇したのは大学1年の女性。大学で福祉の勉強をしている。合唱団で歌ったり、バイトをしたり、あすのばの活動をしたり、いま幸せな日々を送れているという。

「私は母親と2人暮らしです。父親は幼いときに出て行ったきり。いつ離婚していたかも分かりません。それでも、何不自由ない生活でした。毎日食事をとれていました。大学に行きたいといっても、嫌な顔せずに行かせてくれました。

貧困家庭だったかどうかはグレーゾンだと思います。でも、母は大変な思いをして働いていたのを見ていました。寂しいときもあったけれど、寂しいとは言えなかった。辛いときにそばにいてくれる人もいなかった。生まれなかったら良かったと思うこともありました。

でも今は、あふれる愛に包まれて毎日を送れています。この人たちと一緒にいたい。こんなに誰かを思い、思われる日がくるなんて10年前の私には想像できませんでした。

当時は身近な大人の存在が母親しかいませんでした。だから今度は辛い思いをしている子どもたちやその家族のために、私が声をあげていかないといけない。人に寄り添うことがどういうことなのか。いつも考えています。いつか私も目の前の人に愛を注げる人になりたいです」。

そして「貧困とはなにをもって貧困なのでしょうか。子どもたちに本当に必要な支援とはなんでしょうか」と疑問を投げかけた。

目に見えている貧困なら支援が受けられるかもしれない。だが、彼女のようなグレーゾーンで目に見えない場合は理解されないこともある。

■心が苦しい子どもたちは、子どもの貧困当事者ではないのか

学習支援ボランティアを経験してきた大学4年生の女性は制度に対する疑問を語った。「ここからこっちは貧困の子どもと線引きをすることに問題意識を持っています。学習支援でも生徒に条件をつけることがあります。年収がいくら未満の家庭と。それより少し所得が多ければ支援は受けられません」。

仕組み化、枠組み化することで救われる人もいれば、こぼれ落ちる人も出てきてしまう。例えば、両親との仲が劣悪だった場合、家を出て一人でなんとかしないといけない。だが、世帯年収で判断すると十分となってしまい支援を受けられないという問題も起こる。

「心が苦しい子どもたちは、子どもの貧困当事者ではないのでしょうか。線引きをするべきではないと思います」。

■大人の貧困て言わないで

パネルディスカッションで、社会人の男性は親子関係の複雑な感情を語った。「親から虐待を受け、施設で生活してきました。困ったのは親を嫌いになれなかったこと。好きだから家に帰りたい。でも帰れば虐待がある。でも困った困ったとなんにもやらなければ成長はないから、ハングリー精神で頑張り続けてきました」。

母子家庭で育った大学生の女性は「子どもの貧困でなくて、大人の貧困という人がいます。でも、私は親に感謝しています。親を責めないでほしい」という。

子どもたち・若者たちの状況は一人ひとり違う。あすのば全国集会で語られた言葉も、全国で生きづらさを抱える子ども・若者の中の一部の意見だろう。一人ひとりの話を聞くのは終わりがないかもしれない。だが、幸いにも全国には子どもと向き合い、声を聞く、多くの個人・団体がいる。こうした人たちの声が届くことで子どもたちに寄り添った制度になっていくだろう。

あすのば副代表理事の村井琢哉さんがいった「賢い人の正論よりも、子どもたちがもやもやしたものを語り、この辺が大事だという方が、素敵な運用がされていくんじゃないか」という言葉が印象的だった。

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2017/12/11