兵器産業等に投資する銀行に「ノー」を言う——銀行の通信簿「フェア・ファイナンス・ガイド」とは?

2016/12/07 NPO・CSR ライター 辻陽一郎

Fair Finance Guide 2017 (日本版) スコア一覧(フェア・ファイナンス・ガイド・ジャパンから引用)


銀行等へ預けられる預貯金は約950兆円。このお金はどう使われているのか。銀行によってはクラスター爆弾製造企業や、気候変動を引き起こす化石燃料関連企業への投融資に使い、社会の悪い流れを引き起こしている。

銀行からのお金の流れを「フェア=公正」にするために取り組む団体が「Fair Finance Guide Japan(フェア・ファイナンス・ガイド・ジャパン)」だ。銀行がどういった企業に投融資する方針を掲げているかを評価して、「銀行の通信簿」をつけ、ウェブ上で公開している。

フェア・ファイナンス・ガイド・ジャパン運営団体のひとつ、環境NGOの「A SEED JAPAN」は、身近に感じづらいお金の流れの闇を解説する「フェア・ファイナンス・スクール」を定期的に開いている。金融機関で働く講師が、ワークショップ形式で日本の銀行の現状や、お金の流れを変えることの重要性について分かりやすく解説する。
フェア・ファイナンス・スクール「市民=預金者が世界を変えるためにできること」

■銀行のお金の流れを変えて、社会問題の根本的な解決に

フェア・ファイナンス・スクールで講師を務める新関康平さんは「銀行からのお金の流れを変えることができれば社会問題の根本的な解決になる」と語る。

私たちは普段、「社会のなかのお金の流れ」を考えることはあまりない。「自分が使うお金」に対しては、フェアという意識をもつ人は増えてきた。安全で安心で、生産者にも優しいフェアトレードやエシカル消費などの言葉も広がっている。

しかし、預けた先のお金がどう使われ、社会にどのような影響を与えているかには興味をもちづらい。見えない世界であり、知る手段も分からないからだ。フェア・ファイナンス・ガイド・ジャパンは、この闇を評価し公開する。

日本人は銀行を選ぶときに便利さや信頼性を基準にすることが多い。しかし、フェア・ファイナンス・ガイド・ジャパンでは選ぶポイントに「社会性」を入れようと呼びかける。そのために、日本の大手銀行がどういう投融資方針を掲げていて、社会や環境に悪影響を与える企業に投融資しているかどうかの判断材料を提供する。預金する側はこの「銀行の通信簿」を見て、銀行を変えるなどノーを突きつけることができる。

■日本の銀行は海外のスタンダードと比べて社会性が足りない

フェア・ファイナンス・ガイドは現在9カ国にあり、国連が定める基準を元にした世界共通のルールで世界中の銀行に通信簿をつけている。通信簿の項目には「兵器産業」や「気候変動」、「自然破壊」といった17のテーマがあり、各項目10段階評価で点数をつける。

紛争や気候変動の引き金になる「社会や環境に悪影響を与える企業に投融資しない」という方針を掲げているかどうかで点数が決まる。

大手銀行の気候変動に関するスコア(フェア・ファイナンス・ガイド・ジャパンから引用)

大手銀行の気候変動に関するスコア(フェア・ファイナンス・ガイド・ジャパンから引用)

しかし、日本の大手銀行は総じて点数が低い。みずほ銀行は総合平均点が2.1。三井住友は2.0点。一方、オランダ・ベルギーにあるトリオドス銀行は平均8点ほど。世界的にも知名度の高いHSBC(香港上海銀行)やシティ銀行は平均4点ほど。比較すると日本の銀行にどれだけ社会性が足りていないかが分かる。

銀行などを評価する17のテーマ(フェア・ファイナンス・ガイド・ジャパンから引用)

銀行などを評価する17のテーマ(フェア・ファイナンス・ガイド・ジャパンから引用)

■コアラの森を破壊する事業に1400億円を日本の大手銀行が投融資

世界では環境問題や難民問題など、多くの社会課題が解決できずにいる。この背景にはさまざまな要因があるが、銀行が問題を引き起こす企業にお金を渡さなければ発生しない課題もある。

例えば、オーストラリアのコアラがすむ森を破壊して生産した木材チップを購入する製紙会社がある。この会社に日本の大手銀行は合わせて約1400億円の投融資をしている。仮に銀行が森林破壊や生態系を壊す企業には投融資しないと表明すれば、製紙会社は多額の資金がなくなり、事業の方針を変えざるをなくなる。結果的に、課題の解決につながる可能性がある。

社会に悪影響を与える企業には投資しないという方針は広がっていて、現在モルガン・スタンレーなど海外の主要銀行では石炭産業からの投融資を回避すると表明している。

■銀行を変えるためにも、市民一人ひとりの意識を変える

フェア・ファイナンス・ガイドでは、銀行にフェアなお金の流れを訴えている。しかし銀行も営利企業のため、利益になる企業に投融資しないという方針を掲げることは難しい決断だ。そのためフェア・ファイナンス・ガイドでは、銀行との対話を重視する。国際ルールを押し付けるのではなく、対話によって「社会性」のある投融資の重要さを理解してもらうことを大切にしている。

フェア・ファイナンス・ガイド・ジャパンが2014年に活動を始めてから、銀行にも変化の兆しが出始めた。りそなグループは人権・環境に関する投融資方針を改善。三井住友信託銀行も環境・社会に配慮した投融資の国際ルールに署名をした。

「日本社会にはこれまで投融資の方針を掲げるという文化がなかった。フェア・ファイナンス・ガイドがそこに風穴をあけた」と新関さんは言う。金融機関につとめる新関さんはフェア・ファイナンス・ガイドが、お金の流れを良い方向に変えるという可能性を感じたため、プロボノとしてサポートしている。

銀行を変えるには、市民一人ひとりが「社会性」で銀行を選ぶという意識の変化が必要不可欠だ。フェア・ファイナンス・スクールで学んだり、社会性の高い銀行へ預金先を変更したりと、一人ひとりできることを実行していくことが社会のお金の流れを良くし、社会問題の根本的な解決にもつながっていく。


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2016/12/07